ひとかけの幸せと寂しさと
「有り難うございました、テルミナス様。またのご来店をお待ちしております」
「ええ、こちらこそ有り難うございます。今宵は良い夜を」
店員の深々とした一礼に返すように、ガロットも微かに笑みを浮かべ礼を述べ小さな紙袋を手にして店を後にする。店のショーウィンドウに並べられている装飾品が、日の光を受けてきらりと輝いていた。
外に出るとまだ日が昇ってはいるが空気は冷たい、ふるりと小さく震えながら吐息を溢すとそれはすぐに白くなる。
ガロットは足を進めながら辺りを見回す。街は可愛らしいオーナメントで色とりどりに飾られ、行き交う人々も多くとても賑やかだった。
今日はクリスマスイブ、そして明日はクリスマス。
人々が浮き足立つそれはガロットとしても例外ではないのか、それとも明日が満月なのもあってかそわそわとした様子だった。手に持った紙袋に視線を落としては、目を細めて微笑んでいる。
「……喜んで下さるだろうか」
この後待ち合わせをしているベルホルトの姿を思い浮かべ、紙袋の持ち手を握り直したガロットが顔を上げるとその目線の先には見知った姿があった。
「……あれはルディ、と……女性の方?」
あの教会での騒動があるよりももっと前、何度か『遊んだ』事があり、そして数少ないガロットの正体を知っている狼女だ。
そんなルディは今街中の大通りだと言うのに、共にいるおそらく恋人であろう女の子に遠慮なくハグをしたりキスを落としている。
「ル、ルディさん〜……その、流石に……ちょっと恥ずかしいかな」
「んお?そうかい、そいつは悪かったねぇ。でもこう冷えると引っ付きたくなるだろう?」
そういって再度シャオと呼ばれた女の子にハグをするルディの、以前と変わらぬマイペースっぷりを遠目に眺めならガロットは苦笑した。
そんな微笑ましい様子を暫く遠目に眺めていたが、向こうの邪魔になってはならないと思い、こちらに気付かれる前にガロットは止めていた足を再度進め始める。
恋人同士、幸せそうでなによりだ。
暫くしてたどり着いたベルホルトとの待ち合わせ場所であるスリジアの樹の周りは、先程のルディ達のように幸せそうな恋人や家族でどこを見ても賑やかだ。
(……どうにも最近。少し、我儘になり始めているな私は)
誰にも隠さずに愛を語り合える事が少しばかり、羨ましいなんて。
ふぅ、と小さく溜め息を吐いた後、ガロットは近くの唯一恋人達に占領されずに空いていたベンチの隅に腰を下ろし、ベルホルトがくるまで待つことにした。
紙袋を膝の上に乗せ、大切そうに持ち直す。
(……早く、会いたい)
カサリと乾いた音を立てる紙袋の中には
小さく小振りな紅い石と
淡い紫の石の
シンプルなペアリング
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メリクリ!
白兎さん宅(@nigihayami461)シャオちゃん
お名前のみ
るるさん宅(@lelexmif )ベルホルトさん
お借りしました!
2015/12/24
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