小説 | ナノ








担任からの頼まれもの。出席番号が前後だからって日直の私と松川くんが指名されて狭い資料室に2人きり。

「ん。それ重いから俺持つわ」

「あ、ありがと」

男らしくて長い手がスッとこっちに伸びてきて、高校生といえどももうほぼ大人だよなあなんて。

いーえ、と笑う松川くんを見てると、なんというか「好き」って感情が込み上げてきて私はそのまま彼の胸に飛び込んだ。松川くんと私は"カレシとカノジョ"だもん。


「...どした?」

「...」

私の沈黙に答えるように頭にぽんと手をのせて、もう片方の腕を背中にまわしてくれた。
松川くんのシャツ、いい匂い...なんて考えながらゆっくり顔を離すと松川くんが少し屈んで顔を近づける。キスだ、と気付いた時にはもう唇は重なっていて、校内だからかいつもよりドキドキしてしまう。


「お前から抱きつくとか珍しいね」

「ごめん...学校なのに」

「んーん。2人のときに可愛いことされっと俺も危ない」

そう言って私のほっぺを両手で摘む松川くん。

「昼休みあと10分もあるな」

「え、うん。...ほっぺ痛い」

意味深な言葉に頭に「?」を浮かべながら時計を見る。

「わっ...!」

いきなり松川くんの手が私の耳元に伸びて髪をかける。露わになった首元にキスをされたと思ったら今度は優しく吸われた。

「ちょ...待って!」

「やだ?」

「嫌じゃないけど、学校だし...」

「嫌じゃないならいーや」

耳のすぐ側で聞こえる大好きな人の声と吐息。
抵抗なんてする訳ないじゃん、と怒りたくなるくらい。

「一静、...だいすき」

途端にピタっと止まり、体を離す松川くんに私が驚く。

「あーー...だめだ」

そう言って資料を手に取る松川くん。最初に止めたのが悪かったかな...、と落ち込む私に気づき、

「違くて、そんな声で名前呼ばれたら俺が最後までしたくなっちゃうの」

こんなとこで初体験は嫌でしょ、と松川くんは自分の胸をさし私の外れたシャツのボタンをしめるように指示する。

「処女って言ってないけど...」

「お前の初めては全部俺がもらうんですー」

初めてじゃないとか言われたらちょっと立ち直れない、とかなんとか小声で言いながらドアを開けて

「今日俺ん家親いないけど、来る?」

「...行く」


好きって感情も手を繋ぐどきどきも、キスも初めては松川くん。
最後の初めては今日あげると決めたんだ。




〜おまけ〜


花巻「雑用おつかれさーん。ん?首んとこ赤いけど...ってキスマじゃねえかこのリア充」

松川「は?嘘でしょ俺の彼女かわいすぎ」

花巻「惚気はいいけど実はそういうの慣れてんじゃねえの?彼女チャン」

松川「それ以上言ったら俺の右手が飛んでく」






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