小説 | ナノ










背高いな。バレー部なんだ。数学の時間はいつも眠そう。あ、目が合った。気になる?...ううん、やっぱ好き。

高嶺の花とでも言おうか。男の人に対して「花」という表現はどうかと思うけど。ただ初めて彼の瞳を見たときに「うわ、綺麗」と、そう思ったのは確かだ。周りにはいつも数人の友達がいて顔だけでなく性格もいい。好きだけど。好きなんだけど。


「瀬見と名前がくっつけばいーのに」

気を遣った友達の言葉に顔が一瞬で青ざめた。遠回しに否定されたり、「冗談やめろよ」なんて言われたら立ち直れる気がしない。
そんな不安と好奇心を抱きながら彼の顔をちらりと覗くと、耳を赤く染めた想像もしてなかった表情。同じように私の顔が熱くなってくのを感じた。

その2週間後。冗談でしょ、と言いたくなるほどうまくいく恋に嬉し涙を堪えながら瀬見くんの告白に「うん」と答えた。
未だに隣で肩を並べて歩けるだけで幸せを感じている。さっそく、初めてのデートは今日。桜のシーズンだからって地元で有名な公園でお花見をすることになった。

天気は快晴。気温も高いためかすごい人の数にはぐれないようにとなるべく近づいて彼の後ろを歩く。

「人、やっぱ多いな」

そう言って私の手を握り、「これでへーき」と嬉しそうに笑う彼を私はどんどん好きになる。胸が苦しいほどに。


「来年もまた桜見に来ような!」

まだ来たばっかりなのに。"来年も"の言葉に図らずしも顔がにやける。

「来年も私でいいの?」

めんどくさい女だな、自覚しながら笑って言った。

「何言ってんの」

彼も笑って、そう返した後に「いつか名前から『来年も来よう』って言わせるかんな」「そんぐらい俺のこと好きにさせっから」

続く言葉にまたどんどん顔が赤くなる。こんなことよく照れないで言えるなあ。
...よろしくお願いします、とよく分からない返事をしつつ桜の花びらが舞う中また一歩ずつ歩き出す。

桜が散るのは終わりを告げられているようで好きではないけど、「次」が楽しみな今年はそんなに悪くないと思えた。

初めてのデート。桜に隠れてキスをして











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