きっと夢中にさせるから前編







「やっぱエレノアってスタイルいいよねー」

スマイルのその一言が決め手だった。

まだ大丈夫、大丈夫と自分を甘やかしてたけ ど、もう現実から目を背けられない。

映画にくぎづけになっているスマイルを横目 で見て、決心した。

ダイエットしよう!!

きっと夢中にさせるから

「どこ痩せる必要があるんスか」

アッシュは呆れたように言った。

こっそりスマイルの理想の体型をリサーチし ようと思ったのに…。

「だって、最近ご飯が美味しくって…つい食べ すぎちゃって…」

私の目の前でユーリがアップルパイにかぶり ついた。 手づかみで味わうユーリをアッシュが窘める 。

ああ、私も食べたい…でも我慢…

せっかくアッシュが出してくれた手作りパイ を断るなんて勿体ないにも程がある。けど、 はじめが肝心だもん。我慢。我慢。

「そのくらいがちょうどいいッスよ。あんま 細いのも不健康で好きじゃねーッス」

「だ、だって二の腕とか気になるし、なのに む、胸…は…小さい気がするし…」

その言葉に2人の視線が私の胸に集まった。

「いや、適乳だろう」 「男はみんな巨乳が好きなわけじゃないっス よ」 「うむ。ちなみにベル、サイズは?」 「ちょっ なっ何聞いてるんスか!」

アッシュは一瞬見ただけで視線を外してくれ たけど、ユーリは舐めるように胸を凝視して いた。 そんなユーリに若干戸惑いつつ、でも相談に 乗ってもらってるのだから、と口ごもりなが ら胸のサイズを告げた。

「そうか。小さくはないがな…スマイルがどの 程度の大きさが好みかはわからんが…まあ問題 は形と感度だ」

ユーリは、ちょっと失礼する、と言って私の 胸を両手で掴んだ。

「えっ」

何をされてるのか一瞬理解できなかった私の 思考は、下から押し上げられるようにして揉 まれた胸の感覚によって戻された。そして自 然と唇の形が「き」と発する形に変わる。

「うむ、私好みだが」、というユーリの言葉 は私の悲鳴とアッシュの怒声によってかき消 された。

――――

「…はぁぁ…」

なんだかどっと疲れた。

結局スマイルの理想体型もわからなかったし 。揉まれ損…。

お風呂に浸かって、改めて自分の身体を見つ める。

…うーん、男の人ってこういう体型好きなのか な…?

見せたこともないし、わからない。

…スマイルも、付き合ってるはずなのに全く手 を出してこないし…

はぁ、やっぱり魅力ないのかなぁ…

「…もうちょっと、セクシーになんないかなあ 」

エレノアさんと比べたらすごく幼稚な体型。

…これから夏だし、露出も増えるし…

よし!

海の季節になるまで、セクシーになって…スマ イルを夢中にしてやるんだから!

――――

「え?ベルちゃんがダイエット?」

スマイルは驚きの声をあげると共に夕食のカ レーを食べこぼした。

白いテーブルクロスにボタボタとカレーが落 ちるのを見てユーリは一瞬眉を顰めた。 だが、どうせ掃除をするのはアッシュだ。そ う思い直すと、何事もなかったように優雅に 茶を啜った。

「そうだ。何やら思い詰めていたぞ。あのま まで十分魅力的だというのに…」

「ふうん…」

スマイルはスプーンをかじりながら、(ここで アッシュに行儀悪いっスよ!と注意された)面白 くない、と感じていた。

『なんでユーリやアッシュに相談するかなあ 、ベルちゃん』

スマイルはスプーンを置いた。

「スマイル、どこ行くんスか」

「ベルちゃんとこ。」

食べかけのまま席を立つスマイルにアッシュ は咎めるつもりで声をかけたが、不機嫌なの を感じるとそれ以上何も言わなかった。 スマイルはそんなアッシュを睨み、城を後に した。



続く



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