訪れた二人 

甘味処へ行った翌日、今日も1日頑張ろうと気合いを入れるルリ。
店の前の立て札を「準備中」から「営業中」に変え、後はお客さんが来るのを待つばかり、そんな時だった。

「ねぇあんた、ここって食堂『和み』であってる?」

店の入り口から女性の声がした。
早速、本日最初のお客さんが来たようだ。
質問に答えるため振り返る。


そして目にしたのは、美食ハンターメンチとブハラの姿だった。



ルリは驚いた。
噂が本当だったという事もそうだが、一流の美食ハンター二人が、しがない町の食堂に一体何の用だろう?

「ちょっと、聞いてるの?」

再びメンチに声をかけられハッとする。

驚いている場合ではない。
早く質問に答えなくては、とルリは口を開いた。

「はい。確かにここは『和み』ですが……」
「そう、ありがと」
そう言うとメンチは店へと入って来て、近くの椅子を引きそこに座った。
どうやら食事をしに来たようだ。
食堂に来る理由など決まっているが、ルリには信じられなかったのだ。

「狡いよー、メンチだけなんて」
未だ店の外にいるブハラから抗議の声が上がる。

「しょうがないじゃない、あんたの大きさじゃ店の中に入れないんだから」
「えーオレもう腹ペコ」
グゥゥゥとブハラのお腹から大きな音がした。
「さっきもスシ食べたばっかでしょーがっ!!
ちょっとは我慢しなさい!」
それに対し、声を荒らげるメンチ。

いつもは店の大きさなど特別気にもしないが、そのせいでお客さんが食事できないとなると話は別だ。
ルリは申し訳ない気持ちになり、一つ提案をすることにした。

「あの、もし宜しければ御持ち帰り用にお作りしますが……」
「やった!ほんとにいいの?」
メンチに怒られ、気を落としていたブハラだったが、この一言に笑顔を浮かべた。
「はい。店が小さいばかりに、このような形となってしまい申し訳ございません」
「まあオレは食べられれば何でもいいや」
そう、彼にとっては食べられればそれでいいのである。

「………………」
その間メンチは二人のやり取りや店内を観察していた。

(この店には、落ち着いていてどこか懐かしさを感じさせるものがある。
掃除も行き届いているようだし。
店員も、まだ若いみたいだけどお客に対する心遣いが感じられるわね。)
他にも様々な要素を観たメンチ、概ね及第点といったところだろうと、肝心の料理を注文することにした。

「注文いいかしら?」
「あっ、はい。承ります」
慌てて紙とペンを取り出す。
「その前に一つ、料理を作るのはあんた?」
「はい、そうです」

メンチの表情が変わった。

「じゃあ……あんたが一番美味しいと思う料理を頂戴」



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