強さと覚悟 

「あーあ、壊れちゃった♦」

頭を下げていた為ルリは見ることができなかったが、いつもポーカーフェイスのヒソカがお礼を言った時には目を丸くしていた。

「君が変なことを言うから手元が狂っちゃったじゃないか♠……でも、まさかお礼を言われるなんてね♣」

どうしてだい?とルリに疑問を投げかける。

「……私には、覚悟が足りていませんでした」

「命を奪う覚悟と、奪われる覚悟が。
貴方程の実力者と初めて戦って、自分が死ぬかもしれない状況に陥って、気づいたんです」

うつむきながら袴の裾を強く握り締めて話すルリに、無言のまま耳を傾けるヒソカ。

「私は弱い、今の私は貴方に生かされている。だから…………私の覚悟が足りないと気づかせてくれて、殺さないでくれて、ありがとうございます」

顔を上げたルリの瞳には強い光が宿っていた。

「感謝するくらいなら、早く強くなって欲しいなぁ♦ボクが見込んだんだ、素質は十分にある♥」

ポンポンとルリの頭を撫でるヒソカ。
とりあえずは殺される心配が無くなったので、少し警戒を緩めていたルリはヒソカの成すがままになっている。

「二人が戻ってくるまでババ抜きでもする?」

正直ルリは、さっきの今でそんな気分にはなれなかったが、このまま何もせずに二人を待つことの方がよっぽど気まずいのでヒソカの提案にのることにした。

「……そうですね」


 ***


あれからルリがババ抜きで見事5連敗を達成した頃。

何かに気づいた様子で通路の向こう側を見つめているヒソカ。
それ見て、もしやとルリも振り返ってみると、

(ゴン!キルア!無事に間に合って良かった……)

纏の状態でゆっくりとこちらに向かってくる二人の姿があった。
そして、つい数時間前まではその場に立っていることすら困難だったとは思えない程、難なくオーラの壁を突破してしまった。

ルリはこの時初めて二人の才能を実感した。 

本来念はそう簡単に習得できるものではない。
それはルリが念の修行をしていてつくづく感じたことだった。

ルリには運動神経はあまり無かったが、念の才能はかなりある方だとメンチは言っていた。
その為、比較的早く上達することができた。
とは言え、それも何ヵ月という単位でのことである。

数時間という、正に驚異的なスピードで纏を覚えた二人の才能は計り知れない。

(やっぱりすごい、私も頑張らないと……!!)

自分にはまだまだ課題が沢山ありそうだ、とルリは内心ため息をつくのであった。



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