慣れない嘘 

最上階を目指す約束をしてから一週間が経った。

それまでの間ほとんどの時間をゴンとキルアの二人と過ごすこととなり、自然と仲良くなっていった。
少し年下の二人の会話にいつも癒されてるルリ。
最近ではいつの間にか笑顔になることも増えていた。

そして今は、連戦連勝で150階クラスまで来ている。

「ファイトマネーは指定口座にふりこみました」

「どもー」
「ホントだ……。数字がみたこともないケタになってる。つい1週間前まで無一文だったのに……」

ゴンの言う通り、ルリの通帳にも恐ろしい程0が並んでいる。普通に生活していれば、こんな金額はまずお目にかかれないだろう。

(お金は使うのは簡単だって言うけど、ここまでだと逆に何に使えばいいのやら……。)

目の眩むような大金に、使い道を考えてはみたが、倹約家であまり無駄なものは買わないルリには、いい使い道が思いつかなかった。
これがルリではなくキルアだったら、直ぐにお菓子代へと消えるはずだ。

「ちょっとくやしいな」
キルアが少し不貞腐れた様子で呟いた。

「え?」
「?」

「オレが初めて来た時150階まで登るのに2か月位かかったぜ」
どうやらゴンに対し対抗意識を抱いているようだ。

「えーーでもそれって6歳の時でしょ?」
「うんうん。充分凄いことだよ」

「まぁ……そうだけどさーー」
二人がフォローするも、その言葉にあまり納得がいっていないような煮え切らない返事が返ってきた。

「あっそーだ、さっきTVにズシが映ってた」
しかし、会話はゴンの一言によってズシの話へと切り替る。

「見た見たあいつまだ50階にいたな……」
「キルアがすごくイヤな感じがしたっていう
"レン"って一体何だろうね……」

「そういや、ルリには聞いてなかったな……オマエは"レン"って知ってるか?」

「えっ!しっ、知らないよ?!」

ルリは自分に話がふられるとは思っておらず、慌てて知らないふりをする。

「そっか……」
しょんぼりするゴンと、

「…………ほんとかよ」
その言葉を疑うジト目のキルア。

「まっいいや、多分もっと上のクラスに行けば同じような奴がいるかもしれないから……」

話が自分から逸れたことにホッと息をついた。

「それよかズシに聞いた方が早いんじゃない?」

(あれ?これからズシに会いに行って、ウイングさんとも会うんだっけ?)

ウイングなら一目でルリが念を使えることがわかるだろう。
そうすると二人にもバレる可能性がある。
バレること自体は問題ないが、教えてくれと頼まれるのは困る。
しかし何より、ルリ自身もウイングに念を教えてもらいと思っていた。

どうしようかとルリが考え込んでいる内に、二人はズシの元へと向かおうとしていた。

(まずいかも……とりあえず今は逃げよう!)
「ごめんね!私急用思い出したから!」

「あっ、おい!」

叫びながら走り去って行くルリの背中に、キルアの声は届かなかった。

「ったく、いきなりなんだよ」
「どうしたんだろ?」
「とりあえずズシのとこ行こーぜ」


 ***


その後ルリは、ウイングの宿から帰ってきたキルアに「何で急にいなくなった」、「"ネン"のこと知ってんだろ」と、問い詰められて大変な思いをすることになるのだった。



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