出会い 

ルリは50階クラスの試合にも勝利し、何試合か観戦した後、60階へと向かうエレベーターに乗っていた。

想像していたよりも順調に進んでいるので、もしかしたら課題を達成するまでそれほど時間はかからないかもしれない。
そんな事を考えているうちに、チンという音が60階に到着した事を告げた。

エレベーターを降りると、

「あーー!さっきのお姉さん!」

大声でこちらを指差すツンツン頭の少年の姿。


(えっ、嘘!本物のゴン!?何で私の事知ってるのかな?)

驚きと同時に疑問を抱きながらも、とりあえず挨拶をすることにした。

「こんにちは」
「こんにちは!オレはゴン!お姉さんは?」
「私はルリだよ」
「オレ、1階闘技場の試合見てたんだ!ルリさんって凄く強いんだね!」

(なんていい子なんだろう!)

ルリは、キラキラした純粋な瞳で自分を強いと言ってくれたゴンに感動してしまった。

そこへ再びエレベーターの到着する音がした。

降りてきたのは白いフワフワの毛に猫目の少年。

「キルア、こっち!」


「あれ?あんたは確か……」

二つの大きなアメジストがルリを見据える。


「ほら、オレが戦いたいって言ってたお姉さん!ルリさんだよ。キルアが来る少し前にここで会ったんだ」

「ふーん、オレキルア、よろしく」
「さっきゴン君が言ってくれたけど、ルリです。こちらこそよろしく」

こちらは一方的に二人を知っているが、実際は初対面なので一応君付けである。が……

「ゴンでいいよ」
「オレも別に呼び捨てでいい」


……まさかの即効呼び捨てOKとは、しかしルリにとっては有難い申し出だった。
心の中では常に呼び捨てだったので、やはりこちらの方が呼びやすい。

「ありがとう、じゃあそう呼ばせてもらうね。私のこともルリでいいから」

「うん!…あっそうそう、キルア見て!6万ももらっちゃった。少し時間がかかったね」
ゴンは思い出したように話しかけた。

「ああ、ちょっと手こずっちまった」
少し間を置いてからキルアが答える。

「けっこう強かったんだ?」
「いや、全然」
「素質はあるよ、あいつ強くなる。でも、今はまだオレから見りゃスキだらけだしパンチものろい。殴りたい放題だったよ」

会話の内容からして、どうやらズシとの試合の後のようだ。

「なのに倒せなかった。それに、あいつが構えを変えたとたん、兄貴と同じイヤな感じがしたんだ。何か…わかんないけどヤバイ感じ。あれ、きっと何かの技なんだ!」


「あいつの師匠が"レン"って言ってた」

(ん?師匠って……確かウイングさんだっけ?)
ルリの表情が目に見えて明るくなる。


ここ、天空闘技場へと出発した日、メンチにはもう教える事は無いと言われた。
その為ルリは新しい師匠を探さなくてはならなかったのだ。
だが、ウイングに弟子入りすれば、その問題も解決である。


「ゴン…、オレちょっと予定を変えるぜ。最上階を目指す!」
「うん!」

二人の会話も一区切りついたようだ。

すっかりタイミングを逃してしまったが、そろそろおいとましようかとルリが考えていると―――。

「そういえば、ルリはどうして天空闘技場に来たの?」

ゴンが質問をしてきた。
キルアもその横でうんうんと頷いている。
確かに、普通の女性ならここにいる事はまずあり得ない。
疑問に思うのももっともだろう。

まあ、子どもがいる事も本来ならあり得ないだろうが。


「私?私は師匠の課題をクリアする為に来たんだ」

「へー、何かオレと似てるな。オレの場合は師匠じゃなくて親父だったけど」
「その課題って?」

「200階まで行って、一勝以上する事だよ」

その言葉に二人は、一瞬驚いた後顔を見合わせニヤリと笑った。

「折角だしルリもオレ達と一緒に最上階目指そうよ!」

「え!?そっそんな!」

「オレ達とじゃ嫌なのかよ?」
キルアがムッとしながらそんな事を言うので、慌てて否定した。

「違うよ!まさかこんな風に誘われるとは思って無かったから、びっくりして…それに嬉しくて……」
なんだか急に照れ臭くなって、語尾が小さくなってしまった。

「じゃあ決まりだね」
そう言って手を差し出すゴン。
キルアも同じ様に手を差し出してきた。

「!……改めてよろしくね」
ルリは満面の笑みで二人の手を握った。



もしかしたら、今日の占いは1位だったのかもしれないと、ルリは思った。



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