力試し
あの日から3年が経ち、ルリは17歳になった。
厳しい修行の日々に嫌気がさし、投げ出してしまおうと思った事は一度や二度ではなかったが、一流の料理人でもあるメンチの料理を食べる事で、自分も負けてはいられないという気持ちで頑張ってこれたのだ。
念はまだ四大行しか教わっていないが、体術に関してはかなり上達したと、少なくともルリ自身はそう思っている。
まあ、これからそれを証明しに行くのだが……。
***
「ルリ!今から支度して天空闘技場に行きなさい!」
ビシッという効果音が付きそうな勢いで指を指される。
「天空闘技場……ですか?」
メンチのいきなりの発言にも、この3年間ですっかり慣れてしまった。
「あんたも最初に比べたらだいぶ強くなったけど、
実戦経験はまだまだ。そこで、1つ課題を出すことにしたの」
「課題は、天空闘技場で200階まで行って勝つ事!200階に行くまでは念を使ったら駄目だから。
課題をクリア出来たら……あたしが教える事はもう何も無い」
「!」
「念についてはまだ教えて無いこともあるけど、
あたしよりももっと教えるのがうまいハンターに教えて貰った方がいいわ」
「でも!」
ルリは納得出来ずに反論しようとしたが―――
「とにかく!言いたい事があるなら、まずは課題をクリアしなさい。話はその後。わかった?」
「……わかりました」
メンチはそれを許してはくれなかった。
***
という訳で、天空闘技場の前までやって来たルリ。
早速受付を済ませようと列に並ぶ。
世界中から腕自慢が集まるとあって、列がとてつもなく長いのでなかなか進まない。
(もしかしたら、ゴンやキルアも来てたりして……。)
というのも、ついこの間、メンチとブハラはハンター試験の試験官を任され、家を空けていたからである。
(まあもし来てたとしてもこれだけの人が多ければ気付かないよね。既に二人が勝ち進んでいれば別だけど。)
そんな事を考えていると、受付はもうすぐそこだった。
ルリの番が来て、紙に必要事項を書き込む。
「ルリアマツ様は1528番です」
闘技場へと入って行くルリ。
(いよいよだな……私、メンチさんとブハラさん以外とまともに戦った事ないし大丈夫かな?)
中央にあるリングで戦っている人の多くは、いかにもという感じのゴツい男性である。
「1528番、1493番の方はCのリングへ」
自分の番号がコールされる。
「おいおいなんだよ!ありゃ、女じゃねぇか!」
「可哀想だぜ!せいぜい手加減してやれよー!」
沢山のヤジが飛ぶ中、ルリは一つ深呼吸をして対戦相手を見た。
「へへっ!こりゃあ楽勝だな、ついてるぜ!」
やはり自分の相手が若い女である為、油断しているらしい。
「始め!」
開始の合図と同時に、男は掴みかかろうとルリの方へ向かって来た。
それを素早くかわした後、男の腹に軽いパンチを1発お見舞してやる。
そして男はそのまま動かなくなってしまった。
「1528番は50階へ!」
会場が一気にざわつく。
「マジかよ……本当は男なんじゃねぇのか?」
「可愛い顔してやるなぁ!嬢ちゃん!!」
一先ず勝てた事に安心したルリだったが、
男と思われるのは心外である。
「ねぇキルア、あのお姉さん凄く強そうだね!オレも戦ってみたいなぁ!」
「まあでも、流石にゴンには勝てないだろ」
その試合を見ていた者の中に、二人の少年がいた。
出会いはもう目前に迫っている―――。
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