決意
最後のお客さんの会計が済み、ホッと息をついたルリ。
しかし肝心なのはこれからである。
両親にハンターの事を相談しなければならない。
店のすぐ隣の家へと向かう途中、どうやって話そうか考えながら歩いた。
***
あれから何時間かたったが、未だに言い出せずにいた。
今は三人で夕食を食べているところだ。
「ルリどうかしたの?あなた今日は少し変よ?」
流石は実の母親である。
これはチャンスと、ようやく両親に話し始めた。
「………そう。話はわかったわ。あなたはどうしたいの?」
優しく訪ねてくる母。
ルリは自分の気持ちを素直に伝えた。
「私…美食ハンターになって世界中を旅してみたい。もっと料理を勉強したい。でも、ハンターは危険な仕事だし、お店だってなんとか私一人でもやっていけるようになったのに……」
「ルリ」
今まで黙って話を聞いていた父親が、口を開いた。
「店のことなら心配いらない。父さん達だけでも大丈夫だよ。武術だって、メンチさんが稽古をつけてくれるんだろ?駄目ならいつでも戻ってこればいいじゃないか」
自分の背中を押してくれる両親に、感謝の気持ちが込み上げてくる。
「……ありがとう、お父さん、お母さん」
この瞬間、ルリは美食ハンターになる事を決意したのである。
***
メンチとの約束の日―――。
朝から店の外で二人を待つルリ。
両親も見送りの為に外へ出てきている。
足音が遠くから徐々に近づいて来て、店の前で止まった。
「どうやら心は決まったみたいね」
「おはよう。この前の料理凄く旨かったよー」
そう言って重箱を返すブハラに、両親共々お礼を言い受け取った。
「どうか娘を、ルリをお願いします」
「勿論。私が必ず立派な美食ハンターにしてみせますから」
(ここから、新しく始まるんだ……。)
そう、これがルリの運命を大きく左右する事となるのだが、この時はまだ知るよしもなかった。
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