出会い




「うわぁ…ど、どうしよう…!!」

編入する日の朝、家を早めに出たけれど友達のいない私はこの広い学校を目の前にあたふたとするしかなかった。

今まで三つ子の私たちはずっと傍にいたけど、私と弟たちは編入先が違うためここに居るのは私一人だ。

私は京都の洛山高校に編入し、弟二人は新設校の誠凛高校を選んだ。
私が洛山に編入すると言ったら二人もこっちに編入すると言っていたが、諸事情で東京を離れることができなかった。

京都にはお父さんも住む予定だけど、仕事で今日は間に合わないそう。
仕方なしに1人で自宅から学校までの距離を歩いた。

そして冒頭に戻る。
職員室に行くまでまだ時間がある、そう思ってあちこち歩き回って辿り着いたこの葉桜の並木道を眺めていたらこの場所が分からなくなった。

「…え?ここ何処…」

自他ともに認める方向音痴の私は頼れる人もいないため、どうすることもできなかった。

下手に動かないで探しに来てくれるのを待っていた今までとは違う。
どうしようと考えていると声をかけられた。

「何をしているんだい?」

聞いたことのあるこの声。
中学の頃何度も聴いたことのある声で…だけどあの時の彼じゃない。

「…迷子になったんです。」
「…迷子、かい?」

訝しげに私の顔を見た彼に付け足して話をした。

「私、今日から編入してきたんです。」

「だから分からなくなって…」と言えば、「じゃあ丁度良かった。」と彼は言った。
その言葉に今度は私が疑問を持った。

「…どうして?」
「僕が君の案内役を任されたんだ。」
「そうなんですか…」

なんて最悪なんだろう。
いくら彼が私が帝光中の人間だと知らないとはいえど、こうも早く対面することになるとは思わなかった。

「自己紹介がまだだったね、僕は「赤司征十郎くん、ですよね。」!!…あぁ。」

何を驚いているのだろう。
貴方のことを知らない人なんて同世代なんだからほとんどいないのは想像できるはずなのに。

「私は沖田翡翠です。」
「よろしく」
「宜しくお願いします。」

こうして彼と私は出会った。


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