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その頃、とある甘味処では美影が総司の為にとせっせと甘味を作っていた。
ここは京に来てから総司と共に常連となっている甘味処だ。
来たばかりの頃、お願いしたら快く許可をくれた。
京では珍しく、長州贔屓ではないらしい。
壬生浪士だと私たちが言っても驚きはしたが、変わらず毎年こうして厨を貸してくれる。


「今年は何を作らはりますの?」
「カステラ!」
「かすてら?…あぁ!かすていらのことやな!」


オランダやポルトガルとの貿易文化が長崎の出島や平戸で行われていたのは日本史で一つの歴史として習う。
有名なものはカステラ。
そしてとんぼ玉などの装飾品。
南蛮文化が取り入れられつつあった時代だ。
カステラは将軍や城主しか食べることのできないと言われていたものだから、そんな上流階級のものを作ると言った美影に店主は驚いた。

「作り方わかりますの?」
「うん♪だから材料も持ってきたよ!」

そう言って厨に材料となる食材を並べ始めた。
卵、砂糖など高級な物もあれば庶民でも手に入るような材料だってある。
それらを見て美影の想い人を悟ったのだ。
これだけ高いものを惜しまず買い、作るのだからきっと渡す相手は沖田なのだろうと。
いつもいつもふたりを見ていた店主だからこそわかったことだ。


「沖田はんも喜ばりはりますよ。」
「!…そうだといいな。」

店主の言葉に笑みを浮かべた彼女は何処か照れくさそうだった。









それから時間を掛けて作り、じっくりと焼き上げれば完成したカステラ。

この江戸時代に食べられていたものよりも現代的な甘さになっているこれは店主も太鼓判を押す程のものとなった。

お礼にといつものように未来の甘味レシピを教える美影。
今回はパンケーキを教えることにした美影は材料の残りでせっせと作ってみせた。
店主はそれを突っ込むような質問をしながらメモを取っていた。


「有難うございました!」
「こちらこそありがとうございます。」

美影はできた甘味を持って屯所への道のりを歩き出した。






「歳ちゃん、ただ今帰りました。」

帰宅した時、近藤さんへ報告に行ったが部屋には居らず、少し歩き回ったが見当たらなかったので美影は土方の方へと帰宅の報告に行った。

「おう…!…そういえば今日は十余り四日か…」

彼女の手の中にある物を見て今日が何の日かを悟る。
毎年毎年行われていれば嫌でも察してしまう。
それに近藤が直々に沖田を非番にするようにと頼みに来たのだ。
彼女が何処で何をしたのかさえ容易に想像がつく。

「うん!今年はねカステラ作ったの!」
「かすてら…?…っあぁ!かすていらのことか………っては!?あれは藩主や将軍しか食えない代物だぞ!?」
「うん!だから作っちゃった☆」
「…はぁ。…………ほんとお前のその料理の腕前には驚かされるぜ。」
「総ちゃんに喜んでもらいたいからね。」

嬉しそうに少し照れた美影の顔を見て土方もつられて笑みを浮かべた。


「じゃあ部屋に戻ります。…歳ちゃんも仕事はほどほどにね。」
「!…ああ。」

そして美影は副長室を去った。

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