04



楽屋についてひと段落したとき、音也の携帯に着信が来ました。

彼は誰からなのかを確認した後、受話器を上げました。


「あ、あの…………え?」



―カシャン…


彼はこれでもかと目を見開いて携帯を落としたのです。

彼の様子がこの携帯の相手から着信を受け取ったことによっておかしくなったのは明白です。

…いったい何を言われたのでしょうか。


「…すみません、持ち主が『取り敢えず急いで来てください!!!』…は?」

『あれ…先ほどの方とは違う方ですか?』

「すみません、状況説明をお願いしてもよろしいですか?」

『…この携帯の持ち主である桜空美桜花さんが事故にあわれました!!!』

「…え?」

『今、救急車の中から連絡させていただいてます。

彼女を今から○○病院へと運ぶので駆けつけることができるのであれば駆けつけてください!!!!』

「わ、わかりました…」


最後の言葉は私たちがアイドルだということが分かっての配慮だろう。

でも…


「どうしたのだ、一ノ瀬。」

聖川さんの問いにハッとして私はみなさんの方を向き、先ほどのことを話した。



「電話は病院からです。」


一つ一つ、心を少しでも落ち着けるように言葉を紡いだ。


「何故、イッキの携帯に病院から掛かってきたんだい?」


レンの言葉はもっともです。


「携帯の着信事体は美桜花からです。

…美桜花が事故にあったそうです。」



「「「「「!?!?!?!?」」」」」


その場の空気が一瞬で凍りつくのが分かった。



「…皆さん、今から単独でのお仕事がありますか?」


「…いや、オレはないよ。」
「俺もだ!」
「…俺もない。」
「僕もないです。」

…音也は放心状態で問いただすことができないのでわかりませんが…

「確か一十木もないと言っていたぞ。」

聖川さんのその言葉にこんな珍しいこともあるのだと頭の端の方で考えていた。

「私も仕事がありません。

いいですか、病院は○○病院だそうです。

今からこのまま病院へと向かおうと思います。」


「…なら、俺が車は用意しよう。」
「…この場合揉めている暇などない、神宮寺に頼ろう。」

珍しく揉めない二人に美桜花の存在の大きさがそうさせているのだと思いました。


電話をかけ始めたレンをよそに、皆さんは私服に急いで着替えて準備を整えた。


「音也、音也!!!!」

「は、え、な、何…?」


ハッとしたようにこちらを見た音也は泣きそうな表情をしていた。


「今から病院へと向かいます。取り敢えず普段の恰好へと着替えてください。」

「う、うん…」


そしていそいそと着替え始めた音也を余所に、レンの方へと視線を向けた。

すると丁度彼と目があい、私はそのままこの楽屋を出る支度を始めた。


「もう来ているそうだ。イッキ、急ぐんだ。」

「う、うん!!!」


大慌てで着替えた音也を引き連れてレンの家の車が待っているであろう場所までみんな走った。




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