15 「ううん。音也君はこうして私を気遣ってくれるわ。それにこの遊園地のチケットだって社長じゃない?」 「え?…うん、そうだけど…どうしてそれを?」 「みんなが私を気遣ってくれているのは私にだってわかる。 昔の話をしてハッとして話を変えられるといやでもわかっちゃう。 そういう気遣いをさせている自分もすごく嫌。だけど今の私はそうさせてしまうから、しょうがないんだよ。」 寂しそうに言う彼女に俺は何も言えなかった。 話し込んでいるうちに観覧車が一周し俺たちは帰路についた。 恋人じゃないから手をつなぐことはできないけど隣を歩くことができるだけで今は嬉しく思う。 記憶があっても無くても美桜花は美桜花だし、それはこれからも変わらない。 俺の大切な人ってことも。 帰り道は無言だった。 さっき話すべきことは話したし、今は考える時間がほしかった。 それを察知してかは知らないけど、美桜花は俺に話しかけてはこなかった。 すると、反対側から歩いてきた人が美桜花にぶつかった。 わざわざ俺と美桜花の間を通ろうとして美桜花が車道に放り出された。 プップーーーーーー クラクションの音が聞こえてきて後ろを見るとすぐ近くに車がいた。 彼女はその場から動けないのかぶつかって倒れた体制のままだ。 とっさに俺は彼女の腕を自分のほうへと引っ張り上げた。 |