09 あれから駆けつけてくれた翔と那月、それに遅れてマサが病室へと訪れた。 それぞれ事情を説明すれば3人とも表情をゆがめた。 それもそうだ。 今まで寄り添って皆を支えてきてくれた美桜花が自分たちのことを覚えていないのだから。 「…じゃあ、美桜花…帰るね。」 「あ、はい…ありがとうございました。」 今日1日がにぎやかだった所為か少し寂しそうな表情をしたかと思おうとすぐに笑顔になった。 "きっとまた明日会える。" そう思ったんだろう。 記憶を失う前の君もそうだった。一度寂しそうなひ表情をしても再び笑顔になるんだ。 理由を聞いたら 「だって、永遠の別れじゃないのよ? またちゃんと音也には会えるのだから… 私のことを想ってくれてるって知ってるから…平気なのっ!!!!」 笑顔で言い切った君の表情が今でも鮮明に思い出される。 「…うん、またね。」 そう告げ、俺たちは去った。 「はい…」 だから、美桜花がとてもうれしそうな表情をしていたのには気が付くわけがなかった。 取り敢えず、一度みんなで方向性を考えた。 「…これからレディはどうするんだい?」 「……現実的なことを言えば、作曲の方が困るのでは…」 「いくら七海がいるからって七海にばっかり負担はかけられないよな…」 「ハルちゃんは僕たちの曲の編曲を担当していましたからね〜…」 「…うん。」 俺の家に集まり、話し合いを始めた。 その時も俺は何処かうわの空でトキヤに言われるまで何も考えられなかった。 「音也。」 「…何?トキヤ。」 「あなたがそのような状態でどうするのです? …みなさん不安なんです。彼女が記憶を失って悲しいのは誰だって同じです。 あなたは美桜花の恋人でしょう?その恋人を支えるべきでしょう? なのにあなたがそうやっていれば彼女はあなたに頼ることができませんよ。」 トキヤの言葉に目が覚めた気がした。 「…そうだね、!俺が美桜花を支えなきゃね!!!!」 「その意気です!音也君!!!」 それから俺は積極的に話し合いに参加した。 ―――彼女の未来を支えるために。 |