08



Ren side



イッキに言われてイッチーと共に病室の外へと出た。
そのままイッキは談話室の方へと足を進めたからオレたちはそれに続いた。




「…音也、さっきのは…」

イッチーも信じられない、と言った表情をしていた。

それはそうだろう。だって俺たちのことを学園時代から知ってるのだからね。



オレに真剣に取り組めと"オレのため"に言ってくれた彼女は今でも鮮明に覚えてる。

その頃を思い出すかのようにオレは目を閉じて脳裏に浮かんだそれを受け入れた。



「…美桜花ね…記憶喪失だって…今までのこと、全部…っ全部忘れてしまってるってっ!!!!

俺たちと過ごした時間も芸能界に入ってからの日々も全部…っ!!!忘れてるって!!!!」



感情的になり、イッチーの腕を掴んでうなだれるイッキ。

イッチーはそれをいつものような無表情ではなく、"悲痛"―。

それが一番しっくりくるね。そういった表情をしていた。



そうさ、イッチーだって彼女に惹かれていたんだからね。

彼女は俺たちのことを下の名前で呼んでたんだからね―…






「レン―。」





俺だってそうさ。

君のことを…――――今でも好きだから。


最後に彼女が呼んでくれたオレの名前が鼓膜を揺らした。





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