00.goodbye
強い波導を感じた。いろんな感情が入り交じった波導だ。胸を貫くような慟哭と、くすぶる苛立ちとを抱えながらも、この波導の持ち主は大きな決意を抱えて、誰か大切な人と別れた。
この波導を感じた夜、なぜか涙が止まらなかった。私はこの波導の持ち主を知っている気がするのに、こんなに強い感情に揺さぶられている誰かの話を聞いてあげることすらできない。ただ、想いを共有して、涙を流すことしかできない。
私には心配してくれるポケモンや、抱きしめてくれる人がいる。暗闇でも、照らしてくれる光がいる。
この波導の持ち主の傍にも、そういう存在が在りますように。そう祈りながら、あたたかい腕に抱かれ、目を閉じて眠りに就いたのだ。
『サヨナラ……!』
私はきっと、この波導を忘れることはないのだろう。
20121001