18.play with me!

〜DENJI side〜

「森の洋館に幽霊ポケモンが出る?」

 就業時間中の真っ昼間からわざわざナギサジムに電話をかけてきたのは、ハクタイジムリーダーのナタネだった。オレが出た途端にナタネは眉を八の字に下げて顔の前で両手を合わせるものだから、大事な用事かと思えば実にどうでもよさそうな内容だ。一応、続きを聞いてはみるが。

「森の洋館って、ハクタイの森の幽霊屋敷って言われている、あれか?」
『そうなの! ゴースあたりが出るくらいなら問題ないんだけれど、その幽霊ポケモンは洋館近くを通った人に悪戯するらしいの』
「ほう」
『で、ジムリーダーとして何とかしてくれって街の人たちから言われて』
「そうなるだろうな」
『でも、あたしって幽霊ポケモンが苦手じゃない?』
「結論を聞こうか。オレに電話をしてきた理由は?」
『あたしの代わりに幽霊ポケモンを捕まえて欲しいなー、なんて』
「切るぞ」
『待って待って待って!』

 モニターの電源を落とそうとした途端に、この金切り声である。いくらジムが防音であるとはいえ、声量には気を付けてもらいたい。ほら、うとうとしていたライチュウがビックリして飛び上がったじゃないか。

「そもそもオレに頼るほうがおかしいだろ。ゴーストポケモンの仕業ならメリッサに頼めよ」
『頼んだんだけど、今コンテストで忙しいんだって』
「だからって、何でオレだよ! じゃあヒョウタだ。あのお人好しなら……」
『いや、デンジのほうが適任なんだって! むしろデンジに頼むあたしに感謝して欲しい!』
「はぁ? なんでだよ」
『その幽霊ポケモンなんだけど、ゴーストタイプ以外にでんきタイプも持っているみた……』
「なんでそれを早く言わないんだ」
『……現金なんだから』

 ものすごく失礼なことを言われた気がするが、今のオレは機嫌が良い。全力でスルーしてやることにしよう。
 だって、ゴーストタイプを兼ねるでんきタイプのポケモンなんて聞いたことがない。ナタネの話が本当ならば是非ともお目にかかりたい。あわよくば、仲間にしたい。
 森の洋館の詳しい場所を聞き、今夜にでも向かって調べてみると約束した後、ナタネとの通話を切ったオレは、モニターをタップしてノモセジムの連絡先を呼び出した。
 二回ほどコール音が鳴った後、モニターに映し出されたのはレインの姿だった。ちょうど良い。目をまん丸にして驚くレインの言葉を待たずにオレは口を開いた。

「レイン! 今晩、森の洋館に幽霊ポケモンを探しに行くぞ!」

 後から聞いた話だと、このときのオレはここ数ヶ月の間で一番生き生きとしていたらしい。



20120107



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