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14.sweet home
〜N side〜
「レシラム」
ナギサの砂浜にモンスターボールを置き、中にいるトモダチの名を呼ぶと、モンスターボールが開いてレシラムが現れた。レシラムは閉じていた目を開き、翼をぐっと広げて見せた。どうやら完全に回復したようだ。
「もう大丈夫そうだね。よかった」
(心配をかけたな、N)
「いや……元はと言えばボクが」
「キミに無理をさせたんだ」と続けようとしたが、それを制するようにレシラムが首を振った。言葉にしなくともボクの心情を理解し、さらにはボクを責めないレシラムの優しさに胸の奥がじんわりと熱くなった。ボクは本当に素敵なトモダチに出会えたのだと心の底から感謝したい。
「レシラム。しばらくこのナギサシティにいようと思うのだけどいいかい? ボクは人とポケモンが暮らす世界を知りたい。そのために、レインとデンジという人間が協力したいと言ってくれたんだ」
(そうか。Nがそれを望むのなら私もここにとどまろう。私はNのトモダチなのだから)
「……アリガトウ」
レシラムからトモダチという言葉を聞くと酷く安心する。トモダチと思っているのはボクだけではないことを確認できるからだ。
(私はしばらくこの地方を見て回ることにしよう。この地にいる神と呼ばれるポケモンにも会っておきたい。N。貴方の心が決まったとき、また私はここに戻ってくる)
レシラムが翼を動かすと心地よい風が起きた。蒼穹へと吸い込まれるように飛んでいくレシラムを見送ったボクは、見知らぬ土地でいよいよ一人になった。
しかし、不思議と不安や孤独は感じない。きっと、レシラムとボクは離れていても心の奥で繋がっているという、確かな絆を信じているからだ。
これからボクは、ボクとレシラムのような関係を築いているたくさんの人とポケモンに出会うのだろう。その出会い一つ一つが、ボクの心に化学反応を起こして世界を広げてくれるに違いないのだ。
20121207