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07.lost truth
〜Denji side〜
「貴方は、N君……!?」
男が目を開けた瞬間、レインは目を見開いてそう言った。エヌ……ってアルファベットのNか? 変な名前だと思ったが、そういうことより。
「レイン、知り合いかよ」
「覚えてない? イッシュを旅していた頃に出会ったじゃない」
「……全く覚えがない」
「そう……貴方も、私のことなんてきっと覚えていないでしょう。でも、私は覚えている。貴方のおかげで、いろんなことを考えられたから」
レイン曰くNというこの男は、レインの話を聞いているのかいないのか、上半身を起こして視線を彷徨わせた。ここがどこなのか、なぜ見ず知らずの場所にいるのか、知ろうとしていると言うより、何かを探しているように見える。
まるで迷子になってしまった子供のような、視線。そんなNと同じ目の高さまで視線を合わせて、レインはレシラムが入ったモンスターボールを差し出した。
「ここに」
「……レシラム」
「……」
「……ゴメン。ゴメンねレシラム。アリガトウ」
Nの表情に、微かに温度が宿った。レインからレシラムが入ったモンスターボールを受け取ったNは、母親を見付けた迷子の子供のように、唇を噛んで泣き出してしまいそうになるのを堪えながら、それを抱きしめた。
初めて人間らしい表情をしたと思ったのに、違和感が拭えないと思ったら、目だ。最初は目覚めたばかりで意識がぼんやりしているからだとばかり思っていたが、それは違う。この男、Nの目には常に光が宿っていないのだ。
「ミッ」
「! ……キミは」
「ミッ! ミィミィ」
「……キミが作ってくれたんだね。アリガトウ」
ココアを持ってきてくれたタブンネにさえ、こんなに柔らかい笑顔を見せるくせに、Nの目は濁った色をしたままだ。
20121024