vsアンダーグラウンドボス
「やっぱり、じめんタイプとは相性悪いな」
ジムリーダーとして、じめんタイプを繰り出してくるチャレンジャーと戦っていた頃は、相性が悪いとか滅多に感じることがなかった。なんせ、相手が弱すぎたからだ。タイプの相性だけで攻略できるほど、ジム戦は甘くない。
ジムリーダーたちは、自分の専門タイプと相性が悪いポケモンをチャレンジャーが使ってくると踏んで、対策を練っている。バカの一つ覚えのようにじめんタイプを繰り出し、ただ大技を叩き込めばいいと思っているチャレンジャーなんて、簡単に完封できるのだ。
しかし、それが自分と同格かそれ以上の実力を持つトレーナー相手だと、簡単には通用しなくなる。ホドモエジムのリーダーであり、じめんタイプを操るアンダーグラウンドのボス――ヤーコン。じめんタイプのジムリーダー相手ともなると、だいぶキツい。
「ふん。苦手なタイプとわかっていて、それでもでんきタイプに拘るその心意気は認めてやろう。だがな……ワルビル! 地震!」
ゼブライカ、戦闘不能。これで、オレがイッシュで使うと決めていた手持ちで戦えるのはサンダースだけだ。やはり、ジム戦の前に電気石の洞穴にでも行って、仲間を増やすべきだったかな。
……まあ、いいか。
「勝てねえなら意味がねえ。トレーナーとして生きるなら、ポケモンが好きなだけじゃダメなんだよ。相性が全てではないが、ワシのポケモンたち相手にでんきタイプで挑んでくるとは話にならんな」
「ああ。わかってるさ。無謀は承知だ。けどな、どんな場面でも、オレは最後の瞬間まで――負けるなんて思わない」
ガマガルはエモンガが倒してくれた。ゼブライカだって、ワルビルの体力をここまで削ってくれた。あとは、こいつに賭けるだけ。
「サンダース! めざめるパワー!」
モンスターボールが開いた直後、青白い光の玉がワルビルを撃ち抜いた。凍り付いたワルビルは戦闘不能。ヤーコンは口角を上げながら、切り札であるドリュウズを繰り出した。
「なんだ。他とは違うな、そのサンダース」
「ああ。シンオウ地方にいた頃から何年も一緒に過ごしてきた、いわば戦友だ。イッシュ地方のジム戦ではなるべくこいつの手を借りたくなかったが、仕方ない。あんた、強いしな。でんじふゆう」
自らの周りに磁場を作り上げたサンダースの足は地面から離れた。これで、じめんタイプの技は効かない。さすがに、ヤーコンも少なからず驚いているようだ。
それはそうだ、サンダースがでんじふゆうを覚えるには人間から教えてもらい、特訓を重ねなければならない。だから、これはオレとサンダースの絆の証でもあるのだ。
「さあ! お互い最後の一体だ! まだまだわからないぜ!」
「ふん! じめん技を攻略したくらいでワシを倒した気になるなよ!」
倒すか倒されるかの、痺れるようなギリギリ感がたまらない。久しぶりの高揚感を抑えながら、改めて思う。やっぱり、ポケモン勝負はこうでないとな、と。
2012.07.26