08.導という光

 太陽に照らされた街、ナギサシティ。海と太陽に愛されたこの街で、今日もまたひとつの物語が幕を開ける。

『ワールドポケモンチャンピオンシップス、本日のハイパークラスバトル! マッチングされたふたりをご紹介します!』

 足場が上昇して視界が明るくなる。眩しいスポットライト。超満員の観客席。割れんばかりの声援。
 全てを振り払って、目の前の相手だけを見つめる。

『ナギサジムのジムリーダー、デンジ選手! そして、ノモセジムのサブジムリーダー、レイン選手! なんと! 今日のバトルは夫婦対決です!』

 一体誰が私たちをマッチングしたのか。偶然なのか、それとも注目が集まることを見越して組まれたのか。
 理由は何であれ、今この場にいる私たちは夫婦である前に、ひとりのポケモントレーナーだ。それ以上でも、それ以下でもない。私情は持ち込まない。ただ、相手が誰であろうと勝利を目指して輝くだけ。

「相手が最愛の嫁さんでも、容赦はしないぞ?」
「もちろんよ。私も、全力でデンジ君たちに挑むわ」
「まるでビーコンバッジをかけて戦ったときみたいだな」
「そうね。あのときは、私はデンジ君に出ていって欲しくなくて必死だったけれど」
「そうだったな。そんなときもあったな」

 あれから、私たちはひとつの道を一緒に歩き始めて、笑いながら、ときに悩みながら、強さを追い求め、強さを磨き続けてきた。それがジムリーダーという立場にいる、私たちのポケモントレーナーとしての生き方だ。
 その成果を今日、ポケモンワールドチャンピオンシップスハイパークラスのバトルという公式戦で、しかも私たちにとって大切な街てあるナギサシティでデンジ君に示すことができるのだから、運命や必然にも似た何かを感じずにはいられない。

『では、両者同時にポケモンを出してください。3・2・1・GO!』

 同時にモンスターボールを投げ上げた私たちを見守るように、きっと、今日もシルベの灯台は光り輝く。その光に照らされ、導かれ、私たちはこれからも共に同じ道を歩み続けるのだ。



END 2021.09.28

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