7.恋の悩みにドッキドキ!


「へえ。ファイとレンさん、喧嘩してたんだ」
「喧嘩って言うか、お互い誤解してたって言うかー」
「小さい喧嘩はしょっちゅう聞くけど、大きい喧嘩は珍しいね」
「でも、ちゃんと解決したし、愛もいっそう深まったから良いんだもーん」
「はいはい。のろけご馳走様でした」

学園内にあるカフェでファイとユゥイは談笑していた。というより、ファイが一方的にのろけを話聞かせているだけだったりする。

「ユゥイは最近何かないのー?」
「何かって?」
「イリスちゃんと何か進展ないのかなーって」
「そうだねぇ。なかなか手強い相手だから」
「らしいねー。いろんな噂は聞くけどさ」

黒鋼が言ったとおり、やはり知ってる人は知ってることなのか、とユゥイは思った。しかし、それも確かにイリスではあるが、本当の彼女がどんな顔を持っているか知る人は片手に数える程度しかいないだろう。自分もその中の一人に含まれていると思うと、ユゥイの頬は自然に緩んだ。

「んー?何にやけてるのー?」
「え?にやけてた?」
「にやけてたー。何?何か良いことあった感じ?」
「うん。まぁ、ボク的には一歩前に進めたの、かな」
「ファイ!ユゥイ先生!」

弾むようなレンの声が聞こえてきた。その方向を向けば、彼女の隣にはイリスの姿もあった。目が合い、ユゥイが笑いかければ、イリスも戸惑うように笑った。

「何?二人で何を話してたの?」
「秘密ー」
「えー、なによう!あ、私レモンスカッシュ!なんかそういう気分。イリスは?ファイがおごってくれるって」
「おかしいなー。オレ、そんなこと一言も言ってないけどー」
「じゃあ、ワタシ、レモンティー」
「ボクもコーヒーおかわりしようかな」
「言っとくけどユゥイにはおごらないからねー」
「あ、男女差別だ。いいの?さっき話してたのろけをレンさんに話しても」
「ええ!?」
「良いよー。恥ずかしがるのはレンレンだしー」
「ちょ、ちょっと!何を話したのよファイ!」
「別にー。オレがレンレンのこと大好きで、レンレンもオレのこと大好きって言う話をしてただけー」
「!」
「……まったく、この二人は目の前でいちゃついてくれるねぇ」
「本当に。レンは多分、無自覚でしょうケドね」
「ボク達もいつかこうなるのかなぁ?」
「さあ」
「否定しないんだ」
「肯定もしませんケドね」

いたずらっぽくイリスが笑う。もしかしたら自分が思っている以上に大きな一歩を踏み出せたのではないか、とユゥイは思った。
いつもの如く、どこから様子を見ているのか分からない『黄色とピンクの双子教師!いちゃつく暇があるなら仕事をあげるから理事長室にいらっしゃい!』という侑子の校内放送が響き渡るまで、四人の笑い声が響いていた。





──END──

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