020.強さを求めて


 曲がりくねった道が目立つこの場所は202番道路。マサゴタウンからコトブキシティまでも、フタバタウンとマサゴタウン間と同じくらい短い。でも、この道を通るには長く時間がかかりそうだ。
 201番道路とは違って、この202番道路にはヒカリちゃんたちと同じ歳くらいか、それより若いポケモントレーナーが目立つ。ポケモントレーナーがいるということは、それはすなわち、ポケモンバトルが繰り広げられるということだ。
 ほら。また、短いスカートをはいた女の子と、パチリと視線がかち合った。

「トレーナーさん、みっけ! ポケモン勝負、お願いしまーす!」

 ポケモントレーナー同士、道端で目が合ったらバトル。誰が決めたわけでもない、ポケモントレーナーなら周知の暗黙のルール。

「こちらこそ、よろしくね」

 当たり前のように、私の隣を歩いていたイーブイが進み出た。
 相手の女の子が繰り出したのは、ビッパだ。この辺りにもよく生息しているポケモンだから、イーブイはすでに戦い慣れている。
 それでも、トレーナーのポケモンは鍛えられていて、同じレベルでも野生のポケモンより強い。技のキレが野生のポケモンとは違う。繰り出されたたいあたりを避けるイーブイを見ながら、そう思った。
 でも、負けない。負けたくないもの。

「イーブイ!」
「ブイ?」
「覚えたての技、試しましょうか?」
「ブイーッ!」
「おんがえし!」

 一撃、だった。渾身の攻撃を受けたビッパは、一撃で戦闘不能になった。
 ナナカマド博士が教えてくれた。おんがえしはポケモンがトレーナーに懐くほど威力が高まる技だ、と。これが、イーブイの私に対する信頼の証と思うと、嬉しくて仕方ない。
 腕の中に飛び込んできたイーブイを思い切り抱きしめながら、嬉しさを噛み締めた。

「あーん。敵わないよ」
「ふふっ。また会ったら戦いましょう」
「もちろん!」

 敗者は自分のレベルに見合った賞金を勝者に渡す、これも暗黙のルールだ。
 女の子からファイトマネーをもらったあと、私はまたコトブキシティを目指して歩き出した。そのとき、モンスターボールがカタカタと揺れて、ランターンの声が聞こえてきた。

(イーブイばっかり、ずるい。わたしも戦って強くなりたい)
「ごめんなさい。ずっとモンスターボールの中だと退屈よね。次はランターンに頼むわね」
(お願いね)

 イーブイといい、ランターンといい、頼もしい限りだわ。
 イーブイは本来、私に似て静かにしているタイプだけど、旅に出て少し好戦的になった気がする。ランターンは元々強くなりたいという気持ちが強く、バトルに対しても積極的で、イーブイを鍛えるときもよくアドバイスをくれていたっけ。
 強くなりたい。そう思うのは、ポケモンの本能なのかもしれない。
 そんな風に考えながら歩いていると、また、視線が絡む。今度のトレーナーは、ヒカリちゃんたちよりももっと小さな男の子だった。

「僕とポケモン勝負しよう!」
「こちらからも、お願いするわ」
「フフン! 僕が勝つけどねー!」

 自信満々に、男の子が繰り出したのはミノムッチ。待ちきれずに、モンスターボールが揺れる。飛び出そうとしたイーブイを制して、私は空高くモンスターボールを投げた。煌めく閃光が、ランターンの形を作る。

「お願い、ランターン!」

 さあ、一緒に強くなりましょう。





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