110.そして私は真実を知る


 大雨に打たれて、結局風邪がぶり返してしまい、ジョーイさんにもみんなにも盛大に怒られて、またしばらくポケモンセンターにお世話になってしまった。
 そして二日後、風邪を完治させることができた私は、ようやく次の街へ行く準備を始められた。バッグに五つのモンスターボールを入れて、一週間以上お世話になったノモセシティのポケモンセンターをあとにする。

「さあ、遅れたぶんを取り戻さないとね」
「シャワー」
「次はどうしましょうか」

 大雨が降る212番道路を進めば晴れた道に出て、ヨスガシティに戻る。ヨスガシティを抜けて、またズイタウンに戻り、今度は210番道路をそのまま真っ直ぐ進んでみましょうか。
 ……そういえば、コダックたちの頭痛を治す秘伝の薬をヒカリちゃんが持って行ったけど。

「あ、レインさん」
「きゃ!」
(びっくりしたー)

 何もないところからヒカリちゃんが突然現れて、心臓が止まるのではないかと思うくらい驚いた。どうやら、キルリアのテレポートを使ってここまで来たらしい。
 ヒカリちゃんのトゲチックもそらをとぶという移動技を使えるけれど、テレポートのほうが瞬間的に移動できるから、こちらのほうが使用頻度は高いのかもしれない。
 それにしても、心臓に悪いわ……。

「レインさん、もう風邪は治ったんですか?」
「ええ。心配かけてごめんね」
「よかった! あ、あたしのほうも成功しましたよ! 210番道路を塞いでいたコダックたちにシロナさんからもらった秘伝の薬をあげたら、みんな頭痛が治って住処に帰っていきました」
「じゃあ、210番道路も通れるようになったのね」
「はい! それで、これ」

 ヒカリちゃんは、赤いコートのポケットから、勾玉に似たお守りを取り出した。

「シロナさんから、カンナギにいるおばあちゃんに届けて欲しいって、頼まれたんです」
「おばあちゃん? シロナさんの?」
「はい」
「シロナさんってカンナギタウンの出身だったのね」
「そうなんです。おばあちゃん、長老さんらしいです」
「なるほど……」
「で、レインさんも一緒にカンナギまで行かないかなって戻ってきたんですけど」

 「行ったことのあるやまごやまでは、キルリアに頼んでテレポートできますし」と、ヒカリちゃんはウインクをした。

「そうね。一緒に行きましょう」
「はい!」
「でも、どうして誘ってくれたの?」
「コダックが塞いでいた道の先は深い霧が立ちこめていて、きりばらいっていう技なしには進めないんです。レインさん、ひこうタイプのポケモンを持ってないって言ってたから、困るかなって」
「そうだったのね。わざわざありがとう。助かるわ」
「えへ。じゃあ、行きますね。キルリア、テレポート」
「キルー」

 異空間へと誘われる光に体中を包み込まれた。一度だけ瞬いたその刹那、私の目に映る世界はあっという間に変わっていた。



Next…カンナギタウン


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