7-7.太陽と鳥のエピローグ
太陽が照らす街、ナギサシティ。この街を訪れるのも久しぶりだ。燦々と降り注ぐ太陽の光も、海風が運ぶ潮の匂いも、懐かしく感じるほど遠い昔に住んでいた気がするのに、すぐに体に馴染んでいく。この街が今日からわたしの帰る場所になるなんて、なんだか不思議。
下船するためにデッキへと向かうと、太陽のあまりの眩しさに手をかざした。左手薬指におさまっている、翼をモチーフをしたプラチナリングが光を受けてキラリと光った。
船のタラップを降りた先では、見知った顔がわたしを出迎えてくれた。
「エイルさん! 久しぶり!」
「二人の結婚式の時にアローラで逢った以来だな」
「ポケモンミュージカルのおねえちゃんだ!」
「レインちゃん、デンジくん。久しぶりだね。娘ちゃんも大きくなったね!」
「だってもうさんさいだから!」
「いやいや。三歳までまだまだあるぞ」
「ふふっ。お姉ちゃんになるのが楽しみなのよね?」
「うん!」
すっかりパパの顔が板に付いたデンジくんと、少しお腹がふっくらしてきたレインちゃん。そして、二人の間に生まれた娘ちゃんが、わたしを一番に出迎えてくれた。
その奥には、あいかわらずサングラスをかけた、マスターの姿がある。
「よう。久しぶりだな」
「マスターも変わらずお元気そうで」
「約束通り、歌姫としてのステージは用意してあるぞ。エイルにとっては小さいステージかもしれんがな」
「ふふっ。そんなことないです。また歌わせてくださいね」
「エイル!」
マスターの後ろから、聞き慣れた声がした。マスターの肩越しに、わたしの名前を呼んだ人物が歩いてくるのが見える。マスターが横に退いてくれたので、わたしはその人を目掛けて走り出した。
故郷を離れて寂しくないなんて言ったら嘘になる。でも、この人が、この人の隣が、今日からわたしの帰る場所。
「おかえり!」
「ただいま!」
これからは太陽に愛されたこの街で、新しく宿した命と共に、わたしの光であり太陽でもある、オーバくんの隣で生きていく。
きみの笑顔の傍で、きみの笑顔と共に、生きていくんだ。
ずっと、ずっと……。
with your smile... END 2019.11.7