3-1.朝の陽射しにまどろむ


 わたしとオーバくんが両想いになってから、まだそう長くはない。でもわたし達は、出逢っていなかった期間を埋めるかのように一緒に過ごしたし、この夏たくさんの想い出を作った。
 ナギサの浜辺で肌がこんがり色づくまで遊んだね。お祭りでオーバくんとデンジくんの出店のお手伝いをしたね。ドライブに行って渋滞に巻き込まれたけどたくさんのことをお話しできたね。わたしが歌う日は必ずお店に足を運んで一番近くで聴いてくれたね。わたしの家で過ごす日は一緒に料理を作ったね。
 どれもとても楽しくて、いとしくて、かけがえのない大切な想い出達だよ。

 ――季節が移ろうとしている。少しだけ、肌寒くなってきたな。

「……あったかい」

 隣で眠っている、見た目通りの高い体温の持ち主に寄り添う。うーんと唸りながら、わたしを抱き寄せてくれる二本の腕がとても好き。こんなことを、眠っている無意識の中でやってくれるんだから、わたしは幸せに溺れてしまいそうになる。
 幸せ、しあわせ。好き、オーバくん。大好き。だいすき。
 でも、それなのにわたしの心には、オーバくんと出逢う前から空いていた穴が塞がらずにいる。
 恋はこんなにもうまくいっているのに、どうしてわたしの夢は夢のままなのだろう。



2019.9.6


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