2-1.胸を焦がす太陽


 お昼の忙しさのピークが過ぎて、パントリーでフッと一息ついた。こうも毎日暑いと必然的に来客数が増えるし、冷たいメニューがよく出る。

「エイル。休憩前に悪いが、七番にアイスコーヒーを二つとアイスミルクティーを一つ、サイコソーダ三つ持っていってくれるか?」
「いいですよ」
「あと、来月のシフト組んどいたから、都合が悪い日があったら早めに教えてくれ」
「わかりました」

 マスターに渡されたトレーを持って、少しドキドキしながらフロアに出た。メニューの内容から、たぶん人間三人とポケモン三匹のお客様だ。もしかしたら、彼らかもしれない。あの笑顔が見られるかもしれない、と思った。
 実際、テーブルにいたのは三人組のマダムとそれぞれのポケモン達だった。残念に思ってしまったことを顔に出さないように、笑顔で注文の品をテーブルに置き、再びパントリーに戻ってエプロンを外した。

「重症だなぁ、わたし」
「ブイ?」
「なんでもない。休憩に行こう」
「ブイッ」

 休憩室に入ると、すでに賄いが用意されていた。今日はナポリタンスパゲッティだ。イーブイにもポケモンフーズとおいしい水を出してあげて、わたしも手を合わせた。
 特に見たい番組はないけれど、とりあえずテレビをつけて、フォークにスパゲッティをくるくる巻き付けながら、ホワイトボードに貼ってあるシフト表を確認する。
 休みの日を確認して記憶に留める。このうちのどの日に会えるのかな。あとからメッセージを送っておかなきゃ。

『次は先日デビューした新人ポケドルグループの独占インタビューを……』

 アナウンサーの言葉が聞こえなくなって、ハッとした。どうやらわたしは、無意識にリモコンの電源ボタンを押していたらしい。知りたくない情報は勝手に遮断してしまうのだから、人間って不思議。
 まあ、いっか。今は楽しみなことだけを考えていたい。早く、あの太陽のような笑顔に会いたい。



2019.8.12


- ナノ -