1-9.太陽に憧れた鳥


 歩きながらイーブイをモンスターボールから呼び出してぎゅっと抱き締める。そのふかふかな体に顔をグリグリと埋めると、イーブイは少しだけ迷惑そうに鳴いた。

「ねぇ、イーブイ。オーバくんって、思った通りの人だったね」

 喫茶店で働き始めたときから既に常連だった彼のことは、すぐに覚えた。彼の髪型や友達が個性的で目立つから、ということももちろんある。でもそれ以上に、わたしはあの、太陽のようにカラッとした眩しい彼の笑顔を、初めて見たときから忘れられなかった。
 だから、コンビニで助けてもらった夜に初めて話したときは嬉しかった。見た目だけじゃなくて、明るくて意外と真面目で熱いくらいに真っ直ぐな性格も、まるで太陽そのものだった。わたしには眩しすぎるくらいで少し羨ましくもあったけど、それが彼らしくて、良いなと感じた。

「ねぇ……たぶんわたし、オーバくんのこと、好き、だよね……?」

 うんうん。と、頷くイーブイを見て頬が少しだけ赤くなるのを感じた。
 今まで、自由に恋愛したことはないから、これが恋なのか確かめようがなかったけれど、思い返せば、自然と姿を追いかけて、ふとしたときに彼のことを考えるようになったときには、すでに恋が始まっていた、と思う。

「わたし、頑張ってみてもいいのかな……? といっても、具体的に何をしたら良いのかわからないけど……でも」

 立ち止まってポケットからスマホを取り出す。もとよりそんなに多くはない連絡先に新しく追加された、三文字の名前を見るだけでなんだか心がふわふわすふる。

「まずは、約束を守らなきゃね。今度、休みの日にちを確認したら連絡してみよう」

また彼に会える。お話し出来る。そう思うだけで、海沿いの道を歩くわたしの足取りは軽やかだった。眩しすぎて少し苦手だったナギサシティの街並みも、気にならないと思うくらいに。



2019.8.9


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