泥棒に美人局。
獣耳に良い思い出なんてない。
「耳は耳でも狐耳じゃ」
「綺麗な銀色ですね」
新八がそう言うと伊織は偉そうに胸を張る。
「金狐の体毛は雄は金色、雌は銀色。しかし伊織のようにごく希に銀色の雄も生まれる。雄の三毛猫みたいなものだ」
随分自慢の毛皮らしい。
扇をはためかせ偉そうに尾を振っている。
「で、その貴重な狐がどーして此処に」
「だから銀時の嫁に」
「いらねえってんだよ」
気怠そうにソファに横たわると伊織がその近くにしゃがみ込む。
「やっぱり駄目か?」
「種族と性別考えろ」
「良いじゃないですか、伊織さんお金持ちなんでしょ。いっそ結婚でも何でもして給料払って下さいよ」
新八が溜め息をつくと伊織が尾を振った。
「許可が出たぞ」
「馬鹿野郎。眼鏡の言うことは信じるなと教えたはずだ」
「銀さんそれどういう意味ですか」
新八と銀時のやりとりに伊織が首を傾げた。
「銀時はもう意中の雌がおるのか」
「そんなんはいないけどなあ」
「じゃあまだまだ伊織の入る隙もあるな」
伊織は嬉しそうに尾を揺らす。
その時がらりと戸が開き、神楽が部屋に入ってくる。
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