「…もう嫌じゃ」
「あ?」
「い・や・じゃ!と言ったんだ」
「そうかそうか」
「もう知らん」
「俺だってこんな我が侭でボンボンで苦労知らずの相手嫌だわ」
「ッ!…本当にもう知らん!出てく!」
今まで発したことがない大声。
伊織は扉を乱暴に開けた。
「大ッ嫌いじゃ!ばか!」
朝から盛大な喧嘩をかました二人に、神楽が目を覚ます。
「銀ちゃん?」
眠気眼を擦り居間に行くと、開け放された扉。
ひゅんと通る冷たい風に、神楽はくしゃみをした。
「銀ちゃん伊織どこ行ったアル」
「知らねー」
「喧嘩したら駄目アルよ」
「大体あいつが」
そこまで言って止める。
大人気ないとはわかっている。
「おはようございます。銀さん、今伊織さんと擦れ違いましたよ」
「あっそう」
「なんなんですか」
「喧嘩したアル」
「喧嘩…」
普段仲が良い(厳密には、伊織が一方的にくっついてる)二人が急に大喧嘩したため、新八神楽の二人も困惑する。
「伊織大丈夫アルか」
「心配いらねーよ。苦労知らずのあいつのことだ。すぐ帰るさ」
伊織は地図も読めなきゃ公衆電話も知らない。
そんな奴が遠くにいけるものか。
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