ぶんぶんと振り回され頭がくらくらしてきたところで、ぱちぱちと手を叩く沖田。

「伊織、その辺でいいでさァ」
「む。そうか、どうじゃった」
「感心感心、伊織は演技派ですね」
「銀時以外に誉められるのも悪くはない」
「あの、話がいまいち…」

体制低く話しかけると、沖田がにやりと笑う。
伊織は相変わらず抱きついてきた。

「銀時が帰って来ないから迎えにきたまでだ」
「今のなかなか驚いたでしょう、旦那」
「ああ…びっくりした」
「そうかそうか」

伊織が上機嫌になってるうちに沖田が銀時に耳打ちする。

「こいつの非常識も大概ですね」
「またなんかやったのか」
「いや、吉原を知らないというか、下の知識ゼロというか」
「そうなんだよなァ。今時小学生でも知ってること知らないんだよ」

議題は伊織の知識について。
どうやら性的知識はゼロ。
子供は天狐が運んでくるなどと宣った。

「それより沖田君、真選組がこんなとこ」
「ああ、今日は大丈夫でさァ。これはあくまで稀少な銀狐の護衛隊ですから、吉原には手を出さない」

ひとまず安心すると、伊織が銀時の着物を引っ張った。
尾が揺れている。

「なあなあ、銀時。吉原は雄の天国だときいた、伊織も天国にいきたい」
「やめとけやめとけ。マジで。お前には早すぎる」
「その狐さん、銀さんのお知り合いならサービス…」
「しなくていいです!」
「伊織も一応雄だぞ」
「じゃあ天国でもどこでも行け!その代わり嫁入りは無しな」
「それは嫌じゃ…」

天国、と呟き、伊織は耳を垂らした。

「俺はあと一仕事残ってる。帰れるか、伊織」
「伊織も手伝う」
「お前、自慢する癖に自分の価値分かってないだろ…」

傷が付いたら大変だ。
ただでさえ箱の中の箱で育ったのに。

「大人しく帰ったら帰りに油揚げ買って帰るわ」
「! 絶対、絶対だぞ!忘れるなよ!」

飛び跳ねるように踵を返した伊織は、沖田の腕を掴む。

「帰るぞ総悟、今すぐだ!」
「へいへい」

黒い装束が、ぞろぞろと銀色についていく。
影はあっという間に消えてなくなった。



ガラガラと万事屋の扉を開けると、銀色が飛びついてきた。

「銀時!揚げ!揚げは?」
「ほらよ」

持っていた茶袋を投げると、伊織は尾を振って受け取った。

「伊織何食べてるアル」
「揚げじゃ。揚げ」
「神楽ちゃんが酢昆布食べてるのと一緒だよ」

ガサガサと茶袋を漁り、嬉しそうに揚げを頬張る。

「伊織さんくどくならないですか?」
「うム。旨い。新八にもやろう」
「いや、いいです」
「銀時もいるか」
「いらねーよべちゃべちゃしてるやめろ」
「旨いのになあ」


伊織は酢昆布を齧る神楽の隣で揚げを齧った。




title:ひよこ屋


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