途方に暮れる狐が一匹。

「銀時ィ…新八…神楽…どこじゃ」

万事屋の仕事についていこうとしたのに、生憎はぐれてしまった。

探そうにも慣れぬ江戸を歩き回りたくない。
金はあるがばらまくなと銀時に忠告された。

「ばらまいて嫌われとうないし…」

垂れに垂れた耳。
路地の近くに小さく座った。

「寂しいとはこのことか…」

箱入りで育った故に感じなかった感情が伊織を襲う。

「このまま一生再会せずに死ぬのは嫌だ…」

思考が大袈裟になり、伊織はひとりさめざめと泣く。
江戸では珍しい銀狐がひとり泣いているせいか、伊織の周りに人集りが出来た。

「なにしてやがる」

そこに人を割ける声。
伊織は耳をぴくぴく動かす。

「! 銀時!!」

人を割けた男に咄嗟に抱き付く。

「うおっ」
「馬鹿!嫁を置いていくなんて何事だ馬鹿馬鹿!」

そう言って顔を合わせるが。

「……誰じゃ」
「それはこっちの台詞だ」

目の前には黒。
伊織は顔を歪めて後ずさる。

「悪いが銀時以外の雄に興味は無い」
「お前が勝手に間違えたんだろ」
「雰囲気が似とるから間違えた」

そう言って背を向ける。
銀色の尾を揺らした。

「なにか手段はないものか。そういえば新八が何か言ってたな。ケイサツだったか」
「おい」
「ム。貴様、この辺でケイサツとやらを知らんだろうか」
「警察だァ?」
「ケイサツに会って人をさがしてもらうよう頼むのだ!」

仁王立ちをして胸を張る。
男──土方は眉を寄せた。

「警察ってのは俺だが」
「そうか、丁度良い。人を探してはくれんか」

先ほどとは一変。
伊織はキラキラと土方を見た。
嫌な予感がする。
土方は顔を歪めた。

「坂田銀時というのだが」

土方の予感は的中。
まさかあの万事屋を探しているのか。

「万事屋…」
「仕事に行ってしまって行方が分からんのだ」

万事屋に連れて行けばいいのかと思ったら、そうでもないらしい。
厄介な存在に土方はため息を吐いた。
とりあえず一般人だろう。

「屯所で保護…」
「如何したケイサツ」
「土方十四郎、だ」
「ム。そうなのか。では十四郎。宜しく頼むぞ」

屯所で保護するべく、銀色の狐を引き連れる。


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