「今回ばかりは感謝する、長宗我部」
「いいってことよ。それより今度支援……」
「猫、こちらに来い」
チカから取り上げるように俺を持ち上げた就様。
なんかうきうきしてないか。
「お前猫には笑うんだな」
「笑ってなど…」
「心なしか口元が緩い」
やっぱり。
就様は気付いてないみたいだけど。
「就様」
「どうした猫」
朔那だったら。
「俺が来たのそんなにうれしい?」
そうきくと就様はやや顔を赤らめて。
「ううう嬉しい!?我はただ貴様のような面妖な猫が物珍しいだけであってまさか抱けて嬉しいなどとは思っておらぬ!」
「人間だったらあ」
就様はわかりやすいな。
無意識に手を差し伸べ頭を撫でると、茹で蛸就様。
「やだ真っ赤」
「もーり?」
「ううう煩い!我は馳走の指示でもしてくる。ふん、今日だけだからな!」
俺をチカに押し付けて、就様が部屋を出て行った。
「ご馳走だって、チカ」
「らしいな。何が出るだろう」
「厳島なら牡蠣かな!」
「牡蠣かあ」
チカの腕にしがみついて、就様に呼ばれるのを待った。
それから2日。
つまり俺が帰る日。
「就様…?」
チカに抱き上げられたときに就様が俺の着物を掴んだ。
3日間、なんやかんや就様は俺を抱いて寝たりすぐ側に置きたがった。
ずっと一緒だった。
「毛利」
「……………」
就様が顔を上げた。
「貴様の生態系はまだ把握していない故また来なければ赦さぬ。それと3日じゃ足りぬと奥州の竜に伝えるのだな」
あ、
さみしそう。
就様はきっと俺が大好きなのだ。
うん、自意識過剰。
でも、自惚れは必然的。
「おっけい、就様。また来るね」
「絶対だぞ朔那。破ったら赦さぬ」
じゃあな、と、チカに抱かれて厳島を発った。
「おお、帰ったかcat!」「ぐお!」
「ひゃお!」
帰宅早々政宗が俺をチカから引ったくるように抱き上げた。
チカうずくまってる。
「3日も離れ離れは寂しかっただろうcat、今日からはもう大丈夫だ」
そう頬摺りされた。
うううくすぐったい。
「ッテテテ…」
「Ah?元親、まだ居たのか。生憎小十郎がいねぇンだ。だから茶も出せねえ。家帰った方がゆっくり出来るぜ?」
「お前なァ…」
実は俺を半誘拐でレンタルされたために機嫌が悪い政宗。
チカは苦笑い。
「くそ…また迎えに来るからな」
「次はひと月は前に言えよ」
「無茶言うンじゃねぇよ!」
政宗にツッコミを入れて立ち去るチカ。
むむむ、何気に一番大変なのはチカなんじゃ。
「旨い茶菓子があるんだ。食べようぜ」
「茶菓子!食べる!」
そういえば就様は茶菓子を一緒に食べようってのも素直に言ってくれなかったな。
「朔那?」
「ん!茶菓子たのしみ!」
「小十郎には秘密だからな。OK?」
「おっけい!」
次会うときはもうちょっと素直だと嬉しいな、就様!
fin.0102
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