「藤のもあるからな」
「まじで!」

渡されたご飯。
魚に煮物に汁物に。

「藤、魚好きだろ」
「好き!」

藤じゃないけど!

「たくさん食べろよ。またあとで南蛮語、聞かせてくれ」
「任せてよ!梵天丸のために先生になっちゃうからな!」




夜になった。
梵天丸の着物を着せられ、俺は布団の中にいました。

目の前で梵天丸が小十郎様と話し合っている。
俺と寝たい梵天丸と、それは…と困る小十郎様。
まあ知らない子ですからね…。

「藤!」
「あ、梵天丸。……いいの?」
「気にすることない」

梵天丸が布団に潜り込む。

「前だって小十郎に隠れて寝たし」
「そうだっけ…」

全く知らんが。

「猫でも人でも藤は藤だ」
「梵天丸…」

なんか騙してるみたいだ。
俺は。いや、藤は梵天丸の唯一の理解者。
でも俺は藤じゃない。


「梵天丸、」
「…もういいから早く休もう」
「聞いてよ梵天丸、」
「………いやだ」

梵天丸が丸くなる。
小さな溜め息をつく。

「春宮」

小さく丸まる梵天丸と一緒の格好をして、俺は眠りについた。







「……ん、…ふぁー…」
「朔那、随分よく寝てたな」


目の前にいらっしゃるのは奥州筆頭様。
あれ?

「梵天丸…?」
「………お前なんでそっち知ってやがる」

ほっぺびよーんされました。
痛いわ!

「いひゃっ」
「成実か、成実だろ」
「いいじゃん!可愛いよ梵天丸」
「朔那……」
「ごめんなひゃい!」


また一層びよーんされました。
この政宗があんなだったとはなあ。

…いや、俺の夢か。





「………ん、藤…?」

朝起きたら藤がいなかった。
またいなくなるなんて。

思わず涙を浮かべてしまった。

「藤……」
「みゃあ」

声がしたので顔を上げると、藤がそこにいた。
猫の姿で。

「なんだ、お前。…戻っちゃったのか」
「みゃー」

藤はごろごろと喉を鳴らして懐に潜り込んできた。

「藤……」
「梵天丸様」

襖の先には小十郎がいて。
二人分の食事があった。

「………あの少年は?」
「お前がいい顔しないから帰ったんだよ」
「……そう、ですか」

小十郎が頭を下げ去っていった。
ほんとのことを話すのはいつでもいいだろう。

「また話聞いてくれ。藤」


猫は小さく鳴いた。




FIN.0416




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