「たくさんお店があって、子供が遊んでいて賑やかで。本当に楽しいところですよ。それに今は紅葉が綺麗で」

女中さんが話してくれた。
そうか、そうなのか。
いいなあ俺も行きたい。
政宗に頼めばいいんだけど、きっとついてくる。
政宗がついてくると特別扱いされちゃうからなあ。


「ふふー」

朔那、行きまぁす!
お忍びで城下!
お金は前政宗にもらったお小遣いがあるからこれ持ってー。


先ず小十郎様の目を盗まなきゃ。
良直たちは簡単だけど、小十郎様は厄介だぞ。

「朔那」
「みゃっ」

噂をすれば後ろに立ってらっしゃった。
不思議そうな顔をしている。
最近冷えるから、部屋で丸くなっていることが多い俺が出歩いてるのを不思議がってんだな。


「今日は随分体調が良いみてぇだな」
「はいもちろん!」

いや寒いけど。
でも城下に行きたいの。

「政宗様なら鍛錬をなさっているが」
「お、おお!じゃあいってみようかな」

ちょちょちょっと小走りで小十郎様を突破した。
外に出ればこっちのもんだぜ!
夕方には帰ります!

わあわあと響く人の声。
ここが城下ですよ奥様!
小さくなった身体を生かしてきました!

うきうきと足取り軽く歩き回る。
色々売ってるんだなあ。


物を売ってるお姉さんと話をしたり、近くにいたばあちゃんの相手をする。

城下の人はみんな笑顔だ。
しかも政宗をかなり慕っている。


よし、

民のため頑張ってる政宗に何かプレゼント用意するか!うん!
小十郎様にも!
政宗からもらったお金だけど!

何にしよう。
なんか俺が買った物より高いの持ってそうだよ殿は。


ふらふら歩いていると、人気のないところにきた。
お、ちょっと外れてしまった。

戻ろうとすると、視界には赤とオレンジが広がる。


「…!」

紅葉だ。
そういえば女中さんが綺麗って言ってたな。
色とりどりの紅葉を拾い上げる。

これをお土産にしたらどうだろう。
綺麗な紅葉。
それを部屋にばらまいたらいいかもしれない。

もちろん片付けもする。

「そうしよう」

紅葉を拾い、胸に入れた。
たくさん持っていこう。


夢中になって着物に詰めてていると、奥へ奥へ進んでしまう。
空も紅葉色。茜色。
赤色蜻蛉も空を舞う。

紅葉の絨毯に身体を預ける。
ふわりと匂う、秋の香り。


……あっちではよく焼き芋したなあ。
薄らいでしまった記憶を探る。


みんな何してるかな…。


「……ッ」


思い出そうとすると後頭部が痛む。
まただ。
なにか忘れているのか。


「……みゅー…」

寝返りを打つ。
視界には赤、黄、オレンジ。


ふわりと香る匂いに、意識を飛ばしてしまった。








「……さぶ」

目を開けると辺りは真っ暗。
……真っ暗?


「…!!!」

今、何時。

しまった。夕方には帰るはずだったのに。
流石は戦国時代、街灯なんてないし、びっくりするくらい真っ暗だ。

多少目は利くものの、確か外れにきたから足場はよくない。

「……」

ここで野宿ですか…?
戦国時代何があるか分からんよ!
馬鹿!朔那の馬鹿!馬鹿朔那!

自分を戒めてもなにもないぜ!






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