「ゆきむらさまっ」
あっという間におなごになった。
桃色の振り袖。裾は朱色がグラデーションのようになっている。
髪はまとめて、かすがのような感じだ。簪も入れたがな。
唇には淡い紅をいれて、俺って結構可愛くなった。
幸村に様を付ければちょっとそれっぽいよな。
「その、朔那、か?」
「そうだよ」
「み、見違えたな」
「朔那ちゃん似合うよー」
幸村真っ赤だ。
「じゃ、行こうか」
「う、うむ」
「面白そうだからついていこっと」
町へ出て歩く。
身長が高くないから多分兄妹に見えてるだろうが、幸村はそうでもないらしい。
「幸村……様」
「うむ」
手を差し出して握る。
ふふー寄り添ってやるぜ。
ぎゅっと寄り添う。
俗に言う恋人繋ぎなんてしてみたり。
「は、ははは破廉恥…」
「幸村の年でンなこと言わないでよねー」
楽しいけど、女歩きも楽ではない。
やや内股にしてゆったりと歩く。
うう、お前らが抱きかかえるから歩くのすら久々なんだ!
幸村おぼつかないな…。
俺は男だぞ。幸村ー。
団子屋が見える。
幸村の手を引いてみる。
「幸村様、おだんご!」
「い、いや今は良い…」
え、あの幸村が?
「体調よくない?」
「団子なんて喉に通らぬ…」
「旦那緊張しすぎだから…」
どこからか佐助の声。
うーむ。どうみても妹だが幸村には刺激が強いんだな!
俺可愛いからな。うん。
…女装に目覚めたらどうしよう。
「随分面白れぇ格好だな、cat?」
なにやらドスのきいた声がきこえます。
くるりと振り向く、と。
「朔那」
「小十郎様っ」
「…」
蒼い人もいますがとりあえずすっ飛ばしてみた。
睨んできた。
ごめんなさい。
一足遅れて。
「政宗殿、片倉殿」
二人を凝視する幸村と、現れた佐助。
とりあえず佐助に招かれて幸村と手を離す。
「何故政宗殿がここに…」
「HA、猫を取りにきたんだ」
「朔那ちゃんもてるねー」
なんだと。
佐助に抱えられて双竜を見る。
…佐助の言うとおり俺ってモテモテだな…。
猫的な意味でか。嬉しくない。
「今日は幸村様とデートなの」
「dateの続きは俺としようぜ、cat」
「お前別にする必要ないだろ」
女中にすらぷるぷる震える朔那による幸村のためのレッスンだぞ。
お前別にいらないだろ。
「小十郎様とならしてあげるよ」
「何故小十郎なんだよ」
「朔那、俺とではなく」
「政宗は平気そうだし」
ほら、小十郎様は政宗の相手ばっかでデートなんてしてなさそう。
しかも政宗一番偉いんだろ?すぐお嫁さんきても大丈夫な体制だろ。
という、俺の勝手な偏見だけど。
「ねー、佐助」
「ねーって言われても…」
佐助の腕の中から同意を求める。
政宗は面白くなさそうに踵を返す。
「…まあいい。奥州に帰ってきたら存分に楽しませてもらうぜ、朔那」
「帰ってきたらってなに」
俺別に奥州限定じゃないけど。
蒼い人は颯爽と帰っていったので、俺は佐助から降りた。
そして幸村の手を引っ張る。
「ごめんね、幸村。ちゃんとデートできなくて」
「朔那が謝ることではない」
幸村が頭を撫でる。
うおお!かっこいい!
「幸村大好き!」
思わず飛びついてしまう。
すると幸村が俺をゆっくり床におろし、
「破廉恥でござるぅぅうぅぁぁああ」
「旦那ー!?」
「幸村ー!」
ずっと向こうに消えてしまった。
ふふ、確信犯だけどな!
fin.0911
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蒼紅でばってるのでその他に分類
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