「にゅー…」

侍女さんの膝からお送りしております。
今日は政宗も小十郎様も良直たちもいないんだってー。
今はお昼ご飯も食べてお昼寝タイムなので、侍女さんに膝枕されて背中をぽんぽんされてます。

さすが子供、すぐ眠くなる。


「……様…ました…」

微かに侍女さんが他の侍女さんと話す声が聞こえる。
なんなんだろ、でも眠い。


「………片倉様が……」



かたくらさま?
小十郎様が帰ったのか?

俺がもう寝たと思ったのか、侍女さんは丁寧に俺の頭を枕に移して去った。


「…」

ぱちりと目をあける。
そして身体を起こした。

別に寂しいわけじゃないんだからな!
ただ二日も会わなかったから顔見せに行くんだ!

俺は部屋を抜け出して、政宗の部屋に向かった。


「お前らは部屋に戻っていろ」

政宗様の具合を見に来た奴らにそう伝える。

───織田の配下の急襲に遭った。

明智が政宗様だけを狙った。

急なことだったうえ、斬りつけてすぐに闇に消えたために政宗様を優先した。
明智ひとりとはいえ兵に追わせてはきっと返り討ちに遭う。

部屋に誰も入れさせない。

そうするはずだった。



「なんだ、これ」



部屋に、猫がいた。

大きな眼をより開いて、じっと政宗様を見ている。
確か猫の身の丈は4尺。
普通にしていれば視界に入りづらい。

猫は──朔那は鼻がいいらしい。
きっと、ただ寝ているわけではないことに気付いている。


朔那は静かに口を動かした。

「なんで」
「朔那、」

手を伸ばす。
早く目を覆ってしまおう。

すると朔那に引っかかれた。

「ッ、」
「…」

痛んだのはこの傷じゃない。


夕飯を食べなかった。
今は何時だろう。

何時間この顔を見ただろう。


「みゅ…」


目が、覚めない。
覚めない、


覚めない。


「……お前が熟睡してどうする」
「にゅ、」

誰かに髪を撫でられた。
目を開けると、政宗。

「……政宗!だ、大丈夫なの、か?」
「元々そんなに深い傷じゃねぇよ」


どうやら言ってることは本当らしい。
でも今多分昼だ。
回復するのにちょっとかかってる。

「よかった…」
「これくらいで」

政宗が俺の頬を引っ張る。

「うにゅー」
「朔那、小十郎を呼んでくれるか?」
「うん!」


部屋から飛び出して城を探し回る。
うーん、畑かな…。

あ、いた。


「小十郎様!」
「朔那、…」
「政宗が起きたよ!」
「本当か…!」


小十郎様はすたすたと小走りする。
俺も走るけど追い付かない。
くそー…いつもなら抱えてくれるのにー…。





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