今日は静かでした。
朝から静か。
「ひとりぼっち…」
政宗も小十郎様も、リーゼントの人(仲良くなれ、た…?)も、いない。
部屋の隅で丸くなる。
侍女さんが朝ご飯持って来たけど食べなかった。
「みゅ…」
前はひとり大好きだった。
でも、ここでは嫌い。
何時間ごろごろしていたかわからない。
眠っていたかも分からない。
「………政宗…」
「なんだ?」
呟いた途端後ろから声がした。
振り返ると鮮やかな蒼色。
「政宗…!」
「Hey cat、いい子にしてたか?」
チッチッチッと本物の猫を招くように政宗が人差し指を動かした。
それに誘われるように近付く。
1メートルくらいになると、抱き上げられた。
脇に手を入れられ高い高い状態。
「かぶと取れば」
「あァ。…侍女からきいたぜ。朝飯も昼飯も食ってないって?」
「んー…」
高い高い状態で顔がむくれてきたのに気付いたのか、普通に抱き締められました。
肩口に唇があたる。
鼻孔を突くのは、政宗の匂──
「──!」
「どうした、朔那?」
これは、少し前に厭なくらい嗅いだ臭い。
鉄臭く、吐き気を催すこれは。
「……」
「朔那?」
肩を突き放して床に着地する。
政宗は呆けたように俺を見た。
「政宗様、猫は見つかりましたか」
「小十郎。……様子が変だ」
後退りして2人を見る。
双竜が俺を見る。
交わる視線。
「………政宗様。先に湯殿へ行かれては如何です」
「Ah?」
「猫は小十郎が相手をします」
ささ、と小十郎様が政宗様の背中を押す。
小十郎様だけになった。
反対の襖に背を預ける俺に近付かず、廊下に座った。
「朔那」
「…」
怒ってる、だろうか。
俺が政宗を拒絶したから。
「ごめん、なさい」
「朔那」
近付きたく、ない。
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