「お嬢さん、こんな森にひとりはよくないねー」
「お、お嬢さんじゃない!」
「ぼっちゃんかい」
「朔那だ!」
すると慶次は豪快に笑って、頭を撫でる。
うう、強い。
「悪かった、朔那」
「……」
も、もしやいい奴なのか?
俺の本能が警戒を解いている。
「あ、警戒解いてくれた?」
「にゃ、」
そしたら顎を撫でられました。
ここは俺お気に入りの場所です。
ここを撫でられるととても落ち着きます。
「んー」
「お、猫だ」
そう呟いた慶次は笑いながら撫でまくっている。
「ところでお前」
「なあに?」
肩車してくれた慶次に応える。
俺の肩には夢吉。
ポニーテールの処理が困ります。
「お前どっからきたんだ?」
「えっと、政宗知ってる?」
そう気いたらちょっと意外な顔された。
政宗有名人だね。
「お前独眼竜の飼い猫か」
「どくがん…」
確か政宗の通り名だっけ。
「うん。人間だけど」
「そっかあ」
そうぼやきながら慶次はよよいと歩く。
お?
なんか見覚えある景色!
「この辺り、」
「朔那───」
あ。小十郎様の声だ!
「慶次!あっち!」
「うきっ」
「はいはい、と」
慶次を操作すると、視界には小十郎様と政宗!
「小十郎様ー!」
「朔那!」
慶次の頭から手を振ります。
政宗もこっちを見ました。
「朔那」
「小十郎様ー!」
「無視か」
横から手のひらが飛んできました。
頭蓋骨がっちりつかまれた。
「……政宗さま」
「朔那」
にっこり笑わないでください。
ちょっとしたいたずらなんです。
「…俺みえてる?」
「……」
「……」
慶次の問に独眼竜と右目が顔を合わせる。
忘れてたな。
「………前田の」
「風来坊、か」
「本当に独眼竜の飼い猫だったのか」
慶次が横から撫でてくる。
俺は政宗に抱えられてます。
足ぶらぶらしてもつきません。
「風来坊が何故朔那と」
「迷子だったんだよそいつ」
「Ah?迷子?」
「だって追い出されたしー」
「大事な話し合いだったんだ」
小十郎様がわかりやすい説明をくださった。
唇を尖らす。
そうだ。追い出されて暇でした。
「ていうか幸村と佐助は?」
「帰らせた」
「なにゆえ!!?」
なんで!なんで!?
「あの文通りになったし、ついでの話し合いも済んだ」
「ついで!!?」
「政宗様。ついでとは少々口が」
「小言は中でな」
「ゆきー…さすけー…」
俺本物の猫じゃないからそうゆうのやだよー…
「近々迎えにくるそうだ」
「マジで!」
「Shit!渡す気はねぇ」
今度は担がれました。
くっ…俺、元のサイズなら政宗くらいあるんだから!
「苦労をかけたな、前田の」
「え。終わり?」
「ああ。帰れ」
興味なさげに慶次から遠ざかる政宗。
いくらなんでも可哀想です。
「慶次ーまたねー」
慶次に手を振ると振りかえしてくれたー!
お、小十郎様。今日は一段と目つきが悪いですね。
変顔してやろう。
「猫は嫌いか、小十郎」
「いえ」
変顔してると小十郎様が細い目で見てきた。
なんですか。
「ただ猫は読めませんな」
「にゅ?」
「だろう?」
なにこの人たち。
ちょっとこわい。
fin.0826
* * *
慶次好きなので出してみました。
今まで繋がっていましたが次からは違うかも。
急に甲斐にいたりはたまた越後かもしれない
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