「猿は佐助として。犬とは」
「え?ゆきでしょ」
「いや、某は虎でござるよ」
「佐助」
「あ、ああ…俺様も旦那だと……」
「何!」

手紙を握り締めた幸村。
幸村は絶対わんちゃんだ。
だって耳と尻尾あるもん。


「そんなことより中見なよー」
「う、うむ」

三人で覗き込むと(俺は読めないけど)そこには。

「……」
「……」
「ゆき、さすけ?」


沈黙。
うん、わかるよ。
多分昔の人って季節を大事にするからさ、冒頭に『桜並木に心浮き立つ春となりましたが』みたいな文乗せると思う。
しかし政宗の手紙にはないんだ。
俺でもわかる。
内容は、たった一言。


「……さすけ」
「あ、えっとー」
「なに書いてあるの?」


「“朔那寄越せ”」


「……それだけ?」
「うん。…こんな文がよく届いたよね」
「政宗殿は何故朔那を知っている」

あ。幸村には言ってないや。
佐助に説明してもらおう。面倒だから…


「どうする?ゆき」
「朔那は渡せぬ!」
「俺様も賛成だけどさ。近々奥州行かなきゃ駄目だよね」
「そうなの?」
「……!朔那は、つ、連れて行かぬ……」
「えー!」
「御館様から朔那の面倒を見て…くださる、と……」

最後の方かなり小さかったぞ。
生憎武田で仲良いのは、幸村と佐助だ。
親方様は偉いらしいから無理。
仲良くなれない。

「おれも奥州行く!」
「時期悪いよねー」

つまりバッドタイミング。
俺を渡しに行くようなもんだもん!

「オカンーいきたいー」
「そのオカンって止めて」

いきたい!とだだこねすると、長いため息。


「それは…某も連れて行き側に置きたいが…」
「馬だよねー」


そう。馬だ。
ぱかぱかお馬さん。

「馬…乗ってみたい!」
「え。怖くないの」
「のりたい!」

俺ポニーしか乗ってないからね!
お馬さん乗りたい!







奥州に立つ日。
俺は幸村の胸に背もたれする。

「馬疲れないかな」
「朔那は軽いから大丈夫でござる」
「痛くなったりしたら呼んでねー」

佐助は馬じゃないそうな。
そらそうだ。




「いざ行かん奥州ー」


まあ行くのがかなり時間かかるなんて、今の俺には全くわかりませんでした。



fin.0823


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