温かい光がさしているのが分かる。
侍女さんが干してくれた布団はふかふかで、光を浴びながら俺は爆睡していた。
むにゃむにゃと睡眠を貪っていると、頬がツンツンされた。
誰だろう。
うっすら目を明けると小太が俺を覗き込んでいた。
「小太…?」
小太を見上げるとなにやら手に持っている。
なんだろう。
「ん?んん…!?んー!」
これは!
「俺の携帯じゃないか!」
そう。俺が使っていた携帯である。
小太から渡され、中を見ているとまだ待ち受けが見れた。
「うおおおおお!」
勿論圏外だけど、なんかテンション上がってきた!
携帯をいじっていると小太が不思議そうに見てくるので、俺は携帯を見せてやった。
「これね、俺のホントの時代で開発されたちょー便利グッズ!」
「?」
いまいちよく分かってないようなので、携帯をカチカチと操作する。
そしてチロリーンと携帯が鳴いた。
「!?」
小太がびっくりして胸元から刃物を出そうとしてる。
それに大丈夫だよ〜と声をかけて俺は携帯の画面を見せる。
「ほら!小太撮れた」
映っているのは画面いっぱいの小太。
小太はびっくりして携帯をじっと見ている。
「面白いだろ!政宗とかも撮りに行こうか」
こくこくと頷いた小太の背中に乗って、政宗の下へと向かう。
政宗は部屋で煙管を咥えていた。
「どうした朔那」
「政宗こっち見てて」
「Ah?」
政宗がこっちを見た瞬間に、携帯のボタンを押す。
チロリーンと音が鳴ったとき、政宗が目に見えて驚いていた。
「何だ今のは」
「これ見て」
小太の背から携帯を差し出すと、政宗が目を丸くした。
「何だこれは」
「写真って言うんだよ」
「写真…?気持ちが悪いな…」
そういいながらもとても興味深そうに携帯を見ている。
「これは何でも撮れるのか」
「うん。水の中は駄目だけど」
「小十郎も?」
「もちろーん!」
指でグー!ってすると、政宗が片手で俺を持ち上げて部屋を出た。
「じゃあ早速小十郎を写真してやろうぜcat!」
「またサボると怒られるよ〜」
「いいンだよ後でやる」
そう言って政宗が俺を背負う。
新しいものに上機嫌である。
「小十郎〜」
ふらふらと小十郎様を探していると、政宗様の声に反応して小十郎様の頭が出てきた。
「どうされました、政宗様」
「ほら、cat!」
ぐいっと政宗に前に出されると同時に、携帯を向けてみるが。
「…あ」
「どうした朔那」
「充電。切れちゃった」
「じゅうでん?」
携帯の画面は真っ暗。
もちろん充電器なんてない。
「ううむ…」
どうにかしてみるが、もちろんどうにもならない。
残念だ。
肩を落とすと、ひとつ気づいたことが。
「そういえばこれ、ソーラーバッテリーじゃ!」
そう思い至って、携帯を日のあたる場所に置いてみると。
「おおおお充電してる!」
「Ah…朔那みたいな写真だな」
「写真じゃなくて、携帯って言うんだよ」
「けーたい」
復唱する政宗がなんだかかわいく見えて、思わず笑ってしまった。
「…なんだよ」
「別にー」
「なにをしておられるのです」
「秘密だ」
しーっとやる政宗。
小十郎様は小首を傾げている。
少ししてから携帯の充電がマックスになって、またも小十郎様の元へ行く。
「小十郎様!ハイチーズ!」
「あ?」
小十郎様が眉間にしわ寄せた瞬間に携帯が鳴って、画面いっぱいの小十郎様。
むむむ。柄悪い。
「もっと笑ってくれてもいーよね」
「見せてみろ。…ククッこれはなあ…」
すごく笑い出した政宗に小十郎様が更に分からないという顔をしているのがとてもアンバランスで面白い。
「ふふーまたいろいろ撮ろうね政宗」
「ああ!」
「なんなんです一体…」
こちらでも携帯は活躍しそうである。
end
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