白蘭と入江はルームメイト


















お砂糖、それとお砂糖、

最後に水飴とたっぷりの愛情を

それだけで僕は幸せになれる。







「、好きです…」


目の前に居る女の子の声帯を震わせて出た言葉は、女の子の目の前にいる男――白蘭の心にも耳にさえ響かなかった。
そのまま白蘭は軽やかに歩き出し、一方興味も持たれなかった女の子はその後線路に飛び込んだそうだ。



珍しく興味をひかれて立ち寄ってみた雑貨屋で、読んだこともないがどこか懐かしい雰囲気がする絵本を購入して帰った。

「あ、お帰りなさい白蘭さん」
「うんただいま正チャン」

正一はリビングのソファで、1980年頃に出版されたエッセイを読んでいた。何か面白いものでも見つけたんですか、と聞かれた白蘭は先程買った絵本を見せた。

「懐かしいの買ったんですね」
「そう?僕は中身知らないんだけど」
「小さい時はこの絵本か地図の本ばっかりみてましたよ」
「正チャンが地図?世界征服でも企んでたの?」
「そんな白蘭さんじゃあるまい」
「わーひどい」


正一がお茶をいれに席を立ったので白蘭はソファに腰掛け、改めて絵本の表紙を見てみる。
知りもしないものにどうして懐かしさなんて感じたのだろうか。
これを考えるのが白蘭ではなく正一ならば、理屈と記憶を徹底的に掘り起こして悩むとこだ。
だが白蘭にその疑問に対する執着心がないので、ここで疑問は不明瞭なまま忘れられる。

本を反して裏表紙を見れば、先程支払った本体値段+税とバーコードが印刷されており、それ以下は表紙と似たデザインがほどこされている。

「正チャン」
「なんですか?」

正一はソファ前にある低いテーブルへ紅茶を入れたポットとミルクと砂糖を並べてから呼び掛けた相手を見上げた。
その彼はとくに表情も作らず、裏表紙に目を向けたまま瞬きのみを繰り返す。

「この本、どこで燃やそうか?」
「…?」


あまりにも軽い調子で聞いてくるものだから正一は困ったが、あれこれ考えずに素直に聞き直してみた。

「そのまんまの意味だよ」

白蘭は甘党なので砂糖は(彼用に)小皿に山盛りに用意している。彼はその砂糖全てを自分のカップへと放り込み、下品にも音を立てて掻き交ぜる。生憎、砂糖は溶けきらず底溜まりした。

「正チャン、僕の性格を考えてみなよ」
「ああ性格という表現を正チャンは好かないんだったね。じゃあ僕の行動パターンなら知ってるよね」

・好き嫌いがはっきりとしていて、
・興味がなくなれば棄てる。
・他人に紛れ込むことを嫌い
・周りを見ては孤独を訴える

あとなんだっけ…
















「ああ…」

理由がわかったので僕はテーブルから離れて立ち上がった。その際、白蘭がカラにした小皿を右手で持ち、


ソファに座る青年の側頭部目掛けてスイングした。

























2011.02.27


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