正ブル
破壊衝動は立派な自己防衛だと主張した。それを言ったきり彼女は黙り込んでいる。
嘘がお互い下手なのだから言ってしまえばいいのに動かない。
「…昔叶えたかった夢があるんだ」
空調設備の調ったところに居ると代謝がわるくなる、と人から聞いた。
外では梅が実る頃であろう。
「どんな夢なの」
「とりあえず外に出ないかい?」
それこそ今では夢だわ、と幼い顔立ちには似合わない難しい笑顔で目を合わせる
かの女も気持ち悪い。人間味がない。
実際人間から外されてしまっただろうし、新生物として新たに歩みを進めているわけでもないようだ。正に彼女は実験台。
試すだけに利用されてそれが失敗なら廃棄され、成功すれば良いようにおだてられて使われるだけ。
どうやら、この…かの女は理解している。純真無垢なのはイメージだけか。それこそ、持ち主の白蘭と同じなのだ。
なんとも偏見だと思う。
考えが堅い、とでも言おうか、所詮同じこと。
出るための脚なんて亡いしね
「さっきの続きくらい、ここで話せるんじゃないの」
ブルーベルは右手で自分の足元を指差しながら話の続きを促し、正一はそれに従い、口を開いた。
「僕の夢はミュージシャンになることだったんだ」
笑っちゃうだろ、と言うより早く
少女は声をあげて笑い出す。
笑われた正一は唇を真横に引き延ばすのが限界で参ったな…といった表情を浮かべた。これはさっきブルーベルに対して思った「彼女に似合つかわしくない笑顔」と同じ。
聞きたくないから遠ざけるのは普通なのだと、それをまた追求しないことが最善と。自己防衛策はこれで決まりだ
神経の擦り減らしあい
2011.02.26
イメージと異なった現状の原因を突き止めようとするのはお互い疲れる。