クローム誕







眠っていたらしい。心地よい浮遊感がどことなくあの人に似てる。
寝起きの脳はふわふわしてるのに喉と胸の辺りは酷く重い…頭がぐらぐらしてきた。
白い砂嵐に眩しくて滲む笑顔。また頭がぐらぐらしてきた。


「クローム、中学のときみたいに手繋がせてくれない?」

初めて手を繋いだときの初々しい恋心を思い出した。ツナの手はいつも暖かいのねってあの時彼に言った覚えがある。それは今も変わらなかった。

「クローム、」
「なに、ボス」

久しぶりにボスって呼んでみたら、
やっぱり懐かしいねってお互い照れて笑った。

「今までありがとうね」

体を引き寄せて頭からぎゅってされた。
思わず顔を埋めたくなって、でも今の言葉が気持ち悪く思えて聞いてみた。

「どうしたのツナ?」

まるで戦地へ向かう列車に乗り込む手前みたいじゃない。さいごにひとつコスモスの花でも贈る気?





(ありがとうクローム、今までありがとう――それから、――――)








反響、残響、ぐらぐらするの。
記憶に焼き付いたつなの言葉の続きが聞こえるよりも先に、吐き気と頭痛が現実をしらしめてきた。目があつい、やっぱり涙が止まらないじゃない。
ボスがいなくてどうしたら良いの?






ツナのことをまだボスって呼んでた頃にツナがくれた指輪。守護者の証とは違う、薬指に通ったペアの指輪。今もずっとしてるわ……貴方の薬指にも通ってると嬉しいな
貴方が先祖様を指輪から映し出したみたいに、ペアリングからツナの幻影を出せないかしら、余計に切ないだなんて思わないわ会えるだけで安心できるもの

…そういえばツナは普段から愛してるとか好きだとかしょっちゅう言う人じゃない。全く言わないわけじゃないけれど私はいつ彼に愛してるって言っただろうか、もちろん愛してるには変わりない。
いつ、ちゃんと伝えられたっけ…………。


残像、点滅、閑散


チャキリ、とロックを外す。
これを脳に撃ち込めばどうなるとかその先はとか考えても欲しいものが手に入る確証も持てない、なら失う恐怖もないから容易に引き金を引くわ。



















ツナの言葉の続きはなんだったっけ、


















頭の中が弾けた。白く光ったら真っ暗になる




ずっと、愛してるから。
















「クローム髑髏、今までありがとう…

それから、待ってて………――――」


















待ってて
























――――――――――――――

待っててって言ったのは
沢田は仮死状態になるだけだから。
言う訳にはいかないからギリギリの忠告、待ってて、だった。

で目覚めた沢田はまた絶望する。
クローム髑髏HAPPY BIRTHDAY
初音ミクのDearより
2010.12.05 戻る
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