正ちゃん。
僕の大学時代からの友人で、今では同じ仕事場の上司と部下。僕は他の「もしもの世界」を知っている。
いろいろな知識を持った僕は無数にあるもしもの世界でも有力だった。医療、領土、文学どれでも優れている。この力があるなら、手に入らないものはないと思っていた。


でも、手に入らないんだ。正ちゃんだけは。


「白蘭さん」
正ちゃんは僕と違ってカラフルだ。オレンジにも見える赤毛。地下に潜っててもやっぱり東洋人の血が通っていることを受け取れる肌。驚きや感動、焦りを映し出す深緑の瞳。
その正ちゃんに比べて僕はほとんどが白。色素の薄い髪に青白く見える肌。僅かに色があるのは左目の下と、眼だけ。何なら正ちゃんの色に染まっても良いと思うんだ。


正ちゃんの深緑の目の先にあるのは僕じゃない。スパナ君。スパナ君は正ちゃんの高校ロボット大会からのお友達。正ちゃんはスパナ君のことどう思ってるのかな。スパナ君は正ちゃんをどこまで知ってるのかな。僕は沢山知ってるよ。この世界の正ちゃんだけじゃない、別のパラレルワールドの正ちゃんをいっぱいいっぱい知ってる。僕は正ちゃんの色んな面を知ってるよ。でも君は僕のことを僕が思うほど知らないだろうね。だから真六弔花をひそかにつくったことも正ちゃんは気付けなかったね。

僕が真っ白なのは染まるため。僕は自分を清算する意味で白いのかもしれない。だから正ちゃんの色に染めてよ。

でも今の正ちゃんはカラフルじゃない。どうしてかな。赤毛も瞳も肌も服も歯も唇も、全てが真っ赤になっちゃう。正ちゃんの色に染まりたいのに、なんで、なんでどうして、正ちゃんに赤なんて似合わないよ、だから頑張って拭い取ろうとしてるのに正ちゃんは「もうやめ、て、ください、白蘭、さん。」って泣いてる。泣かないで。泣いてる顔を見てると僕も悲しくなるよ、大丈夫たがら泣き止んで。僕の目から流れる涙は透明なのに、正ちゃんの涙は赤い。でもその瞼の奥には深緑の瞳はもう無くて、赤黒い血が貯まっている。

正ちゃんに「僕のこと好き?」って聞いたら「えぇ、好きですよ。」って言ってくれた。「じゃあスパナ君のこと好き?」って聞いてみた。そしたら同じく「好きですよ。」って答えが返ってきた。でもどうしたの?正ちゃん。白い肌を朱にそめて、ちょっと照れ臭そうに、それでいて呟くよう好きって言うの?
だから何となく、朱も赤も紅も嫌いになった。薄く開いた正ちゃんの唇にそっと自分の唇を近づけた。

正ちゃんが何か言った気がするけど気にしない。生温い液体と一緒に優しいキスを交わす。そうしたら僕の唇も赤くなった。正ちゃんと同じ色に染まったから赤も嫌いじゃないかも、なんて思った。正ちゃんは今紅一色。なら正ちゃんの色に染まろう、¨正ちゃんの紅¨に染まらせて?さっきよりも深く、でも優しくキスを落とす。正ちゃんは時々小さく震えながら赤黒い涙を流す。


それさえも愛しく思えて、歯で傷つけないように舐め取る。
「....」

僕が正ちゃんの赤に染まるのに、正ちゃんはどんどん僕みたいな色になる。実際は血でわかりにくいんだけど、正ちゃんが白くなっていってるのが分かる。正ちゃんは僕の色になろうとしてくれているんだね!嬉しいよ僕!僕が正ちゃんに、正ちゃんが僕に染まろうとしてるほど、僕らは愛し合っているんだね。大好き、愛してるよ、正ちゃん。だから正ちゃんも愛してるって言って?


抱きしめたら、正ちゃんは言葉を零した。




「.......スパ...ナ...」
そんな声が聞こえないように、愛してるって繰り返して、そんな名前が言えないようにキスをした。


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一番テーマにしやすい、¨色¨と¨病み白¨を書いた。は良いんだが、表現が貧しいよ、しかも正ちゃんが酷い目にあってる。ご覧の通り、白→正花゜でございました。お粗末様です。
2010/05/27*

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