白蘭


























えーっと
息ってどうやってするんだっけ…――。


苦しい。息が苦しい…酸素を求める水中のアザラシみたいに上を向いてもがいても、なかなか息が出来ない。苦しい苦しい早く息しなきゃ窒素しちゃう。でも喉でなんだかきゅーってひっかかるんだよね。普段は意識もせず当たり前にしてたから、いざ気付くとわかんなくて、考えだしたらまた苦しいんだ…横隔膜ってどううごかすっけ。そういえば少し肌寒いかもしれない。



テストテスト、応答せよ。

白蘭はいつも通りに部下に仕事を押し付けてテスト中。何のテストかといえば、自分の趣味を。
白蘭の趣味…と聞いて何を思い付くだろうか。学者なら部屋に篭って研究をするかもしれない。技術者ならラボでモスカ生産にでも打ち込んでいるかもしれない。ヒットマンなら愛銃の手入れをしているだろう。

白蘭は横世界を眺めることを趣味にしようかと考えた。
しかしそれは想像以上に体力の消費が激しいので頻繁に行うと倒れる。だから趣味という気晴らしには適さなかった。では好物のマシュマロを食べることはどうかと考えた。
しかしそれは常時食べているので楽しんで味わうほどでもないと思ってやめた。趣味などなくとも仕事や使命に専念すればよいのだと言う人も少なからず居るであろう。しかし彼はボスなので、あたえられた役目もなければ、やりたいことだけを伝えて後は全て部下任せにする。自分は意見命令を出すだけなのだ。そのせいで眼鏡隊長が腹を抱えて司令官を努めている苦労のことなど、マシュマロが大半を占める脳みその中の、小麦粉の粒くらいの小規模でしか置いてない。


「ねぇ正チャンひまー♪」
「仕事したらどうですか」
「退屈だよ、つまらない」
「貴方が考える楽しいことはたいていこっちが迷惑します」
「ボス命令だよ、僕の余暇をどうにかして」
「ボスならちゃんとしてください部下に示しがつきませんよ」


やりたいことを伝えれば、チェルちゃんが事柄を正チャンに伝えて、正チャンがまたお腹を抱えながら司令塔に立つ。やりたいことが尽きれば僕の楽しみが減っていく。だから何もアクションを起こさなければ何も減らずに済むかもしれない。楽しみがなければ退屈で溶けてしまいそうだ。


白蘭の出した結果はこうだった。


いつまでも寝転びながらマシュマロを摘んで、人形も同然のユニと茶会をし、気が向けばユニに花を送り、思い付いたことは全部脳内に留めておく。さすればいくらでも仮定を立てられ、思い付く限りの結果が求められる。わざわざ体調を崩す代償を払ってまで横世界を見なくて良いのだ。

次々と空想を練り上げるうちに、やはり実証してみたくなった。
思い付いた議題の内容は、他人に試しても自分と感性が違えば異なる結論が出るので自分で実感しなければならないことであった。




苦しい。息が苦しい…酸素を求める水中のアザラシみたいに上を向いてもがいても、なかなか息が出来ない。苦しい苦しい早く息しなきゃ窒素しちゃう。でも喉でなんだかきゅーってひっかかるんだよね。普段は意識もせず当たり前にしてたから、いざ気付くとわかんなくて、考えだしたらまた苦しいんだ…横隔膜ってどううごかすっけ。そういえば少し肌寒いかもしれない。息の荒い己はなんと滑稽なんだ。




実験結果!どこかに書き留めておけばよかったかな…比較して同意の声を聞きたい。いやその声はもう届かないけども。









































2010.11.22*戻る
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