炎に包まれて、貴方は腐った桃のように過度に熟れていたわ。






我が名はクローム、クローム髑髏。
今はとにかく逃げなくちゃ、その前にみんなを逃がさなきゃ。部屋の壁上部に付いた通気孔。手を取り合ってその狭い長い無機質なトンネルに人を通す。放り込む?逃がす。

「京子、こっちへ来て、手を伸ばして。」

どうしてこんなことになったのかしら。いいえそんなことよりも早く一人でも多く逃がさなきゃ。通気孔の外へ外へ。

「クロームちゃん!」

下からはツナが京子を抱え上げているわ。私が京子の脇をつかんでトンネルの奥に連れ込む。これであと二人、ツナと雨の人がまだ下に。早くしなきゃ、この部屋にもまた奴らが迫ってくる。たがら早く二人をトンネルに放り込まなきゃ。

「次は?」

大人二人どちらかがどちらかを抱え上げなきゃいけない。そして私が引き上げなきゃ。どうやら雨の人の押しに負けてツナが上げられることになったらしい。
雨の人が長身で助かった。ツナが自力で上がれるのも、台になってる雨の人も凄い。ボスが通気孔に呑まれていく。髑髏も山本も早くね、ありがとう、って行って奥に進んでくツナ。


私と雨の人、ツナに言葉は返さずに頷いた。彼の革靴が暗くなって見えなくなったところで私は通気孔の入口から降りた。「お前は行かないのか?」って聞いてくる。野暮なこと聞かないで頂戴。作戦を立てたのはあなたじゃないの。


さっさと部屋の扉を塞がなきゃ、奴らが来てしまったら逃がした時間がパァになる。イメージを周りに捩込んで幻覚をばらまく。雨の人は幻術にかからないように目と耳を塞いでる。
あと少し、扉が消えて、壁になる。
なる、はずだった。

がたん、バンバン!がちゃ。

緊急事態発生、発生。幻術を無視された。扉が開いて何も見てない奴らがたくさんたかってきた。音に驚いた雨の人は、もう刀を構えてる。幻術が解けてるから目を開いても大丈夫よ。入られたからには潰さなきゃ。あんな上に登る能力はないからボスたちは逃げられる。
三叉槍を構えて突き立てる。少し固いものを貫いて柔らかいところを刔る感触が伝わる。キモチワルイ。

雨の人はさすが剣士。返り血に染まっていく。足元にたくさんボールが転がってる。
.......よそ見をしてしまった....私はやられる、やられなかった。雨の人が護ってくれた。
「ごめん」
短く謝ると、昔みたいに笑った。笑いながら剣を振るう。ボールになって落ちる。また奴らに三叉槍を突き立てる。その限りない音の中に、明らかに良くない効果音が鳴った。
「山本武!」
思わず名前を叫んだ。床に時雨金時が落ちた。彼がやられるなんて。
無我夢中でやっていたから気付かなかったけれど、もう敵は居なくなっていた。部屋に来た分は。だから今は、イメージを捩込んで被せて....


『味方だろうが、やられたら消して。』


ちょっと前にボスがみんなに言った言葉。牛の子でさえも頷いた、それだけボスは真剣に辛そうに言った。本当にその時が来るなんて。
イメージを捩込んで被せて...!!!
イメージを...!!!
奴らに傷を付けられたら終り。幻覚の治癒なんで効かない。


『我を失って、仲間を殺してしまうほど辛いことはないからね。』


ボスが念を押した。たとえ俺がやられても、とまでは言わなかったけれど。
山本武の刀を、両手で持って、薪を割るように下ろした。
彼の頭もただのボールになった。
断面を見たくなくて、ボールと首の切り口を合わせた。くちゅ、と水音を立てて。合わせただけじゃ甦ったりしないから大丈夫。手の血を彼のスーツで拭って立ち上がる。



走る走る誰かが走ってる、奴らじゃない。奴らはろくに走れない。じゃあ誰?
消し忘れた扉に誰かが現れた。三叉槍を構える必要はなかった。
「獄寺隼人...」
別の所で足止めをしていた嵐の人。
「クローム早く逃げ!、る...ぞ...」
視線が部屋の奥に移って、その先には雨の人が居た。
 居た?
 どのように?
 立って。
 立って?!

うそ、だってさっき私がそれで!
じゃあどうゆうこと!?なんでどうしてなの?
「ああ、あ、あ。い、いあやぁああァ!」
叫ぶ私を嵐の人が抱き寄せるけれど聞こえない見えないドウシテなんで!?山本武は、私が私が。動かなくしたのよ!

「おい逃げるぞ!」
獄寺隼人が槍を代わりに持って、私の手
を引いて走る。もしかしたらこの人もやられてしまってるのかもしれない。私は?
「嵐の人!」
ねぇ、私は、あなたは、彼は。
「すまねぇ、」

バンッ―――!

肉が飛び散る。山本武が崩れた。
敵は全滅できたみたい。
「ありがとう。ごめん、」救えなくて。
「十代目が言ってたろ、これが最善なんだ。」
恐ろしく狂い開いたままの目を閉じさせてやる。さようなら。

無事(一人欠けて)ボンゴレアジトに戻った。嵐の人と一緒にみんなにこの事を伝えた。翌朝、彼の葬式が行われた。自分より先に旅立った息子に、父親は嘆いた。日本式じゃないから彼は棺桶に居た。
みんなの啜り泣く声の真ん中に眠った彼が居た。蒼い花に体を埋めて、スーツの胸から上が見えていた。首と眉間に切断跡と空洞を残して。




蓋が閉められてゆっくり土に埋まっていく綺麗な黒塗りの棺。
本当は火葬にしてあげたかった。
だからせめて私のイメージを。




どれが最善―――それじゃあさようなら。


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クローム嬢書けた。先日見た夢の途中までを弄って作りました。書いたらバイ●ハザードっぽいものだったと分かった。

お粗末様でございました。
2010.08.29*
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