07 はじまりの吟


 思わず身体を寄せると、徐に宇髄の腕が義勇の腰に回りそのまま抱き込まれ、驚いた義勇だったがどうやら宇髄は寝ぼけているらしく、無意識化での行動というわけらしい。
 それでも、義勇は充分に嬉しかった。
 そのままさらに身体を寄せると腕もその分、宇髄の腕にも力が入って二人は一部の隙間もなく抱き合う形になる。
 顔が熱くなるのが分かる。心臓の鼓動もだんだん早くなってきて落ち着かない気分になって来るが、宇髄の「ぎゆう……」という掠れた寝言を聞くと、異常をきたしていた何もかもが治まり、怒涛の安心感が義勇と身体を包み込む。
「宇髄……」
 思わず名を呼んでしまうと、義勇を抱く腕の力が強まり明らかな意思を持ったその手は義勇の着ていた服の間を掻い潜り、ひたりと背骨辺りに熱く大きな手が当てられる。
「んっ……あ」
 そのまま強く抱き寄せられ、宇髄の顔が義勇の首元へと埋められる。
「いいにおい……」
「三度目の正直だぞ宇髄。起きるのか寝るのか、ハッキリしろ」
「ん〜……?起きる。起きてオマエとエロいことする」
 ドキッと、義勇の心臓が大きな音を立てて鳴り、その後ドクドクと身体中に血液を送り込み始める。もはやなにもかもが義勇にとってはエロいことに他ならないのだが。これ以上は許容範囲外だ。
「え、エロいことって……酔っているにも程があるぞ宇髄」
 声が震える。一体、宇髄は何を己に仕掛けるつもりなのか。そして、このいま感じている気持ちは期待なのか、それとも拒絶なのか。少なくとも、嫌悪で無いことは確かだ。
 すると、宇髄の半分寝ぼけたような鼻声が義勇の耳に届く。
「したくない?俺とエロいこと。こういうさ、ことだよ」
「こういう……?って、あっ!あ、ちょ、あっ……!」
 宇髄の手が不穏に動き出し、スリスリと手が届く範囲で背中を擦り始める。ただのお遊びではないその性的要素を多分に含んだその撫で方に、思わず感じてしまう義勇だ。心はついて行かなくとも、身体はしっかりと快感を拾っている。
「あ、あ、あっ……あ、うっ……んっンッ!う、ずいっ……冗談はいい加減に」
「冗談だと思うか?俺が冗談なんかで男にこんなこと、すると思うのかオメーは」
 片手には背に、もう片手は腹に回りへその窪みに指がするっと入り、そのまますりすりと指先でなぞられる。
「うっ……う、んっ……や、そんなとこ、や、やだ」
「いやじゃねえだろ。つか、感じてんじゃんお前。自分で分からねえ?」
 窪みをなぞった指先は、つつつっと皮膚を擦りながら上に行き、義勇のぽつんと出っ張った乳首をちょんと突いた。
 途端、ジンッとした何かが胸から身体にかけて響き、思わずビグンッと身体が跳ねる。
「はっ……や!や、や、あ!」
 思わず宇髄の身体を手で突っぱねようとするが、指先は二本に増えて親指と人差し指できゅっと抓まれてしまい、さらなる衝撃が義勇を襲う。
「あっ!あ、あ、あっ……!ああっ!んっ……ヒッ……!」
「気持ちイイか、ココ。感じてんだろ。声で分かる」
「か、んじてないっ……!そんなとこ、感じるわけ、ないっ……!」
「嘘言え。男だってココは感じるんだよ。ほら、ココをこうしてやれば……」
 ぎゅうっと強く抓まれ、そしてクリクリと捻られると明らかな快感が胸から身体にかけて走り抜け、思わず身体を震わせてしまう。どうしてここがこんなに感じてしまうのかは分からないが、宇髄の気持ちが知りたいと思う。何故こんなことをするのか。酔っているとはいえ、男同士なのだ、義勇と宇髄は。
「う、ずい……よせ!も、もうっ……」
「もうだめか?無理か。でも俺はやるぜ。腹にキスマークつけるだけじゃ治まらねえ。もっと知りたい、お前のカラダ……」
「おれ、の、身体……?」
 服をたくし上げられ、現れる桃色の乳首。まるで産まれたての赤子のようなそのピュアな色に、宇髄はなにを感じ取ったのだろう、ごぐっと大きくのどを鳴らしたと思ったら、乳輪含め乳首を口に含み、ぢゅっと音を立てて吸ったのだ。
「あっ……んっ!あ、あっ!や、うずい、宇髄!宇髄そこはだめだ!あっ、あっ!あ!」
 胸が熱くて湿った咥内に包まれ、柔らかで弾力のある舌でベロベロと舐められる。気持ちイイと思う。純粋に、それだけは思った。嫌悪など感じるはずもなく、初めて感じる性としての悦びに、義勇は翻弄されつつあった。
「あっんっ!あっ……うずい、宇髄っ……うっ、んんんっ……ああっ……!」
 背全体を、爪で軽く引っ掻かれる。その刺激にぞくぞくぞくっとするような快感が走り、思わず背を反らせてしまうと今度は首元を緩く噛んでくる。
 痛くは無いが、感覚はある。
「うずい……は、はあっ……宇髄、うずい」
「義勇……」
 噛まれたところを丁寧に舐められる。そこでもやはり、快感が身体を駆け抜け、思わず宇髄の背に腕を回してしまったところで、急に舐めるのをやめてしまったのかと思いきや、またしてもすーすーと健やかな寝息が耳元から聞こえてくる。
「うずいー……!いい加減にしろ!一体、なにを、俺にっ……」
 俺に、何だろうと思う。宇髄はなにを思って義勇にこのようなことを仕掛けたのか。誰ともこういった触れ合いをしてこなかった義勇にとっては何もかもが未知の世界で、ただ二つだけハッキリしていることがある。一つは、気持ちよかったということだ。今まで感じたことのない快感だった。そして、もう一つは宇髄にしか許したくないということ。こういうことは、宇髄としたい。もう二度と無いとは思えど、叶うなら宇髄にして欲しい。
「宇髄……」
 明日、朝起きた時にどんな顔をすればいいのか分からないが、目が覚めて宇髄がいたら嬉しいと思う。
 その気持ちの本当の名前を、義勇はまだ知らない。

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