05 蜜、啜る


 義勇が作ったつまみは、ちくわの中にキュウリを入れたちくわキュウリと、鳥皮ポン酢、そしてもやしと豚肉の炒め物を用意すると、宇髄の眼がきらめく。
「うっわ!義勇の手料理か!これはいいつまみだな。よし、じゃあ……乾杯といこうぜ」
 手渡されたのはガラス細工がきれいな洒落た猪口で、一杯目は宇髄に注いでもらい、義勇も宇髄の猪口に酒を満たしささやかにグラスを合わせて乾杯だ。くいっと猪口を傾け、義勇は目を見開いた。
「んっ……これは、美味い。なんか、酒臭さが無くてフルーティーでこれは……!」
「だろっ?この酒ってすげえ美味ぇんだよ。まあ、大抵あれだけどな、要冷蔵の酒は美味いのが多いけど、この酒は特別に美味いと俺も思う。急ぐことはねえ。ゆっくりやろうぜ」
 しかしここで、義勇の悪い癖が出てしまった。
 何気に義勇は酒好きだ。なんでもイケるほどには、酒好きだが特に日本酒が好きなのだが、酔っ払ってしまうと何をしでかすか分からなくなる上、記憶にその酔っ払っている間のことが残るため、後悔の海にいつも飲まれるので、酒を飲むときにはいつも慎重に、酔わない量というものを決めて飲んでいたのだが。
 この酒が悪かった。モロに義勇好みのこの酒は、悲しいかな酒好きの心を大いにくすぐってしまったのだ。
 つまみもほどほどに、義勇は手酌で杯を重ねてゆく。それは、宇髄も驚くほどのスピードで。
「ぎ、義勇。ちょっとペース早いんじゃねえか?もっとゆっくり飲めよ」
「……宇髄。……宇髄!宇髄!!」
「デカい声を出すんじゃねえ!聞こえてる!なんだよ、もう酔っ払っちまったのか?」
 くしゅくしゅと眼を擦った義勇は、猪口をテーブルの上へと置き、ソファの隣に座っていた宇髄の腕へと身体を傾げぽすっと、頭を乗せた。
「義勇?」
「宇髄といると……とても、楽しい。心が和む。離れている間は、いつも寂しい。顔を見ると、嬉しくなる。抱きしめられると、顔が熱くなって……心臓が、変になる。けど、離して欲しくないって、思う。ずっと、ぎゅってしてて欲しい。うずい……」
「あのな、義勇」
「腕の中、宇髄の腕の中は不思議だ。広くて、狭くて、温かくていいにおいがして、ぎゅってされると心臓がドキッてなって、深く呼吸するとすごく、安心する。けど、落ち着かない気持ちにもなる。なにされても、宇髄ならって……宇髄であるのならって」
「義勇、なあ。んなことお前に惚れてる俺に言えば、どういうことになるかくらい分かって言ってんだろうな。なんか、もう俺……」
 宇髄の表情に、じわっと欲情が滲み出す。義勇はそれを、寝ぼけた目で捉えた。
「ぎゅって、してくれる……?すごい、ぎゅってして欲しい。息ができないくらい、ぎゅううって」
 途端だった。徐に宇髄が猪口をテーブルに置いたと思ったら、がばっと勢いをつけて覆いかぶさって来たのだ。その両手は義勇の背に回っている。
「っわ!う、宇髄っ!」
「だめだ、もう限界だ。酔ってるのか何か知らんけど、お前それはヤベエよ。なんだよ、俺ならって。俺ならなにされてもお前はいいってのか。いやだろ?」
「……いや、かな」
「は?なんだよ、その『かな』って。いやかなってなんだ。やっぱりいやなんじゃねえか」
「だって、宇髄だし。他の人間だと、俺はすごくいやだ。触って欲しくない。触られたくない。けど、宇髄は……宇髄、気持ちいい」
「気持ちいい?俺の、なにが。手?この間のアレか」
「なにもかも。手もそうだし、カラダも、心も温度もその……き、キスも。俺、宇髄と抱き合うのが好きだ。気持ちいい。涙が出そうになる」
「義勇……」
「でも、時々ぎゅって心臓が痛くなる時、ある。そういう時、宇髄にきらわれたくないと思うことが多くて、戸惑う。俺はこんなだし、でも宇髄はすごく、素敵な人だから」
「す、素敵ってオマエ、そんな言葉を」
「素敵だ。宇髄は、すごく素敵だと俺は思う。だから、怖い。宇髄に誰か他に好きな人ができた時、俺は心から応援できるかなって。宇髄は素敵だから、付き合いたい人、たくさんいる。たくさん人を幸せにできる力を持ってるから。だから、俺には勿体無い。……ずっと、勿体ないと思ってた」
 酒の所為か、涙腺が弱っている気がする。じんわりと視界が滲んでゆく。すると、ぐいっと距離を詰めてきた宇髄とばちっと、目線が絡み合った。
「俺……こんなんだけど、宇髄はそれでいい……?」
 なんだか心の言葉をそのまま装飾もせずにブチ撒けている気分だ。何を言っているか、自分でもよく分からなくなってくる義勇だ。このまま先に踏み込むことに対し、抵抗感が薄れていっているのが分かる。
「うずい……?」

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